記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
立ち上がったときに突然目の前が暗くなったり、めまいが起きたりするのは貧血のせいじゃないか、と思ったことはありませんか。確かに、貧血でもめまいや立ちくらみが起こることがありますが、低血圧が原因で起こることもあります。この記事では、低血圧で起こる立ちくらみやめまいについて解説します。
血圧とは、心臓から押し出された血液が血管の中を流れるときに、血管壁を押す力のことです。血液が血管壁を押す力が強いと血圧が高くなり、弱いと低くなります。つまり、低血圧の人は血液を押し出す力が弱い、ということになります。
高血圧とは違って、低血圧にはまだ厳密な定義が決まっていません。ただ、WHO(世界保健機関)では世界共通の基準として、最高血圧(収縮期血圧)100mmHg以下、最低血圧(拡張期血圧)60mmHg以下を低血圧と定義しています。
いくつかある低血圧の分類法のうち、ここでは本態性低血圧、二次性低血圧、起立性低血圧に分類する方法を紹介します。
起立性低血圧で立ちくらみやめまいが起こるのは、心臓から押し出された血液が血管壁を押す力が弱く、脳に十分な血液が行き渡らなくなってしまったためです。これは「脳貧血」と呼ばれるもので、俗に言う「貧血(鉄欠乏性貧血)」とは異なります。
「貧血(鉄欠乏性貧血)」とは、血液に含まれるヘモグロビンが少なくなったことが原因で起こる症状です。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ役割を持っているので、少なくなると全身のだるさや動悸、息切れといった症状があらわれます。
起立性低血圧による立ちくらみやめまいが起きたら、倒れて頭を強打することがないよう、身の安全を確保することが大切です。症状がおちつくまで、その場で座ったり、横になったりしましょう。
なお、立ちくらみやめまいといった症状は貧血(鉄欠乏性貧血)でも起こる可能性があります。もし貧血(鉄欠乏性貧血)だった場合、鉄剤などで不足している鉄分を補う必要があります。めまいやふらつきが頻繁に起こるようでしたら、念のため病院で血液検査を受けてみることをおすすめします。
起立性低血圧は、普段の動作や生活習慣で気をつければ予防できます。
寝ている状態から起き上がるときや、座っている状態から立ち上がるときは、できるだけゆっくりと体を動かしましょう。
軽いジョギングやウォーキングなどで適度に体を動かすと、心臓の機能や脚の筋肉を鍛えることができます。
睡眠不足になって自律神経が乱れると、血圧調整に影響が及びます。自律神経の働きを整えるためにも、しっかり眠りましょう。
栄養バランスのよい食事を1日3回食べることが大切です。特に、1日のスタートとなる朝食は、脳の栄養補給にもなります。
ストレスがたまると、自律神経の乱れや倦怠感など、さまざまな体の不調の原因になることがあります。十分に休息をとる、趣味に没頭する時間を設ける、リフレッシュするなど、日頃からストレスの発散を心がけましょう。
起立性低血圧による立ちくらみやめまいは、脳に十分な血液を送り込めないことが原因で起こります。血中のヘモグロビンの量が少ないことが原因で起こる貧血(鉄欠乏性貧血)とは異なりますので、混同しないように気をつけましょう。