記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
過換気症候群は不安症やうつ病など精神的なことが原因で起こる過呼吸に起因する症状のことです。この症状を回復させるためにはどんな対処をすればいいのでしょうか?過換気症候群の対処法を紹介するので、いざというときのための参考にしてください。
過換気症候群とは、うつ病などの精神疾患やパニック障害といった精神的不安、極度の緊張やストレスなどにより過呼吸の状態となり、血液が正常よりもアルカリ性となることで現れる病態です。
一般には、不安・不満・葛藤などの心の問題がもとになって起こります。それに自律神経系の異常、呼吸を司る呼吸中枢の異常、呼吸感覚の問題などが関連して、症状が現れると考えられています。思春期以降に多く発症し、20歳前後に最も多く、男性より女性に2倍多くみられるとされます。神経質だったり不安症な傾向がある人、緊張しやすい人などに起きやすい傾向が見られます。
不安感、息苦しさ、動悸、めまいなどに襲われます。また、手足のしびれ、筋肉の痙攣や硬直症状が現れます。手はすぼめたような形になりやすく、耳の前や顎の関節をたたくと顔面神経が刺激され、唇が上方にあがるような徴候が見られることもあり、このような症状が30分~1時間続きます。
激しい過呼吸と無呼吸を繰り返すようになると意識混濁が起こることもあり、そのままにしておくと10分以上発作状態が続くこともあります。
意識的に呼吸を遅くし息を吐くことで症状は改善しやすくなります。発症した本人は不安が強く、なかなか呼吸を遅くすることができないことも多いです。まずは「発作症状が起きても、時間が経てば改善する」ことを説明して本人をできるだけ安心させ、ゆっくり呼吸するように導いてあげましょう。また、横になったり座ったりできるような場所を探してあげることも大切です。
以前は、紙袋を口にあてていったん吐いた息を再度吸わせて血液中の炭酸ガス濃度を上昇させる方法(ペーパーバック法)が有効とされていました。しかし過換気症候群での発作、また心筋梗塞、肺塞栓など酸素が足りなくなる状況下でペーパーバッグ法での処置を選択した結果、低酸素症に陥ったケースが報告されているので注意が必要です。
ただし、医療機関で酸素量モニタリングなどをしながら行う場合もあるため、効果がないということではありません。基本的に「病院でおこなう処置方法」と認識しておくようにしましょう。
ゆっくりと呼吸ができるようになれば数時間内に症状は改善するとされ、発作の強さにかかわらず回復すれば後遺症が残ったり死に至ったりすることはないと考えられています。
しかし過換気症候群で起こるしびれ、痙攣、失神などはさまざまな病気で起こりうる症状です。身近な人がこれらの症状をはじめて訴えた場合には、あまり安易に考えず、肺塞栓症など肺や脳付近の病気に起因する可能性も考え、念のため病院で検査してもらいましょう。
また、不安が強く抱きやすい人に対しては、抗不安薬や抗うつ薬の投与が改善につながるケースも多く、病院では上記で紹介したペーパーバック法の処置も受けることができます。なかなか改善しない過換気症候群に関しては、病院に相談することをおすすめします。
過換気症候群に陥っているときは、ゆっくりとした深い呼吸ができるような声掛けを適宜行うといった周囲のサポートが有効です。深い呼吸ができるようになれば、通常は問題なく回復します。ただし、なかなか治まらない場合は病院で適切な対処をしてもらうことをおすすめします。また、まれではありますが重篤な疾患が隠れている可能性もあるため、念のため病院で検査を受けるようにしてください。