失語症とは ~ 脳の損傷が原因で発症する病気 ~

2017/11/29

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

言語能力に障害が現れる「失語症」。実は失語症は複数のタイプに分けられ、そのタイプによって現れる症状は異なります。治療法も併せて、以降で詳しく解説します。

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失語症とは

普段、私たちが言葉を話し、また他人の言葉や文字として書かれている言葉を理解できているのは脳の機能が正しく働いているためです。しかし、脳の言語に関わっている部分が、脳血管疾患や物理的衝撃などで損傷すると、失語症を発症することとなります。

失語症になると以下のようなことができなくなる、またはその可能性が大きくなっていきます。まずは言いたい言葉が頭に思い浮かんでこない、また言いたい言葉が口に出せず代わりに思ってもいないような言葉が口に出てきてしまうと言う症状です。

また、言葉と言うのはありとあらゆること、たとえば計算や読み書き、聞くと言ったことなどにも関係しています。よって失語症になるとこうしたことに対しても支障が出やすくなります。

失語症のタイプ

失語症には4つのタイプがあります。

まずは1つめが「ブローカ失語」です。これは運動性失語とも呼ばれており、イメージを言葉にする過程に支障が発生しやすいタイプとされています。

2つめが「ウェルニッケ失語」です。こちらは感覚性失語と呼ばれており、脳の比較的後ろの部分にダメージを受けた際に出やすいタイプです。話すことに支障は出にくいのですが、相手の言葉を正しく理解することに支障が出やすくなるため、コミュニケーションを図ることが難しくなりやすいです。

3つめが「健忘失語」です。これは失語症としては比較的軽度で、主に名詞に対する失語が障害されやすいタイプです。そのため特定の物を表現するのに、とても回りくどい言い方になったりします。

最後が「全失語」です。こちらは聞く話す、読む書くと言った全てにおいて失語症が出てくる、比較的程度の重いタイプです。

失語症の症状

失語症の中で特徴的なのは以下の5つの症状です。

まず「喚語困難(かんごこんなん)」です。言いたいことははっきりとしているのにそれをあらわすための言葉が出てこないと言うのがこの症状です。感情や名詞、人の名前などに該当することが多いです。

2つめが「理解力障害」で、言葉は聞こえているけれど、その意味が理解できないと言う症状です。

3つめが「錯語」です。これは誤った言葉を用いてしまう症状のことで、単語としての音の構成が誤っている場合もあれば、意味として全く異なる言葉への置き換えが起きる場合もあります。

4つめが「残語」で、これは限定された言葉のみが繰り返し出てくる症状です。どのような言葉が出てくるかは個人差があります。

最後の「保続(ほぞく)」ですが、こちらも同じ言葉が何度も繰り返される症状です。残語との違いとして、保続によって繰り返される言葉は限定的でないと言う点が挙げられます。

失語症を抱えた人との接し方

失語症の方が置かれている環境は突然、言葉がわからない国に放り出されたようなものと表現されることがあります。よって、この点を理解したうえで以下のような接し方をするのが望ましいです。

まずは相手が何かを伝えようとしている際には急かさないことです。そして意味が通じない言葉を発せられた時も、それを咎めたりはせず、こちらが意図を察して正しい方向に導くことが求められます。

また、言葉だけでなく身振りや手振り、表情などを利用して相手の意図を探るのもひとつの方法です。逆にこちらが話しかける場合はゆっくりと、わかりやすい言葉、わかりやすい文脈を意識するのが良いです。たとえば、はいかいいえ、首を振ることで肯定か否かを答えられる短い文脈であれば、失語症の方でも理解はしやすく、会話を楽しむことができます。なお、失語症は聴覚に対しての障害はないので、不必要に大きな声で話すのは避けてください。

おわりに:失語症のタイプや症状に合ったサポートを

失語症患者さんにみられる症状には、失語症のタイプなどに応じて個人差があります。どのタイプの失語症なのか、どんな症状が現れているのかしっかり把握した上で、コミュニケーションがとりやすいように周囲の方がサポートしていくことが大切です。

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