卵巣奇形腫ってどんな病気? どうすれば治る?

2017/11/20

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

卵巣にできる腫瘍の一種に、「卵巣奇形腫」というものがあります。今回はこの卵巣奇形腫について、発症時に現れる症状や治療法などを解説していきます。

卵巣奇形腫ってどんな病気?

卵巣奇形腫とは、卵巣に腫瘍ができる病気のうちの一つで、卵巣腫瘍の中でも約15~20%を占めると言われています。「成熟嚢胞性奇形腫」「未熟奇形腫」の2種類に大きく分けられます。

成熟嚢胞性奇形腫は腫瘍の中に髪の毛・表皮・歯・骨といった成熟した体の様々な組織ができるもので、基本的には良性腫瘍です。患者さんの約80%を20~30代女性が占めていると言われ、若年の方にも多い腫瘍です。一方未熟奇形腫は腫瘍の中に未熟な神経系組織ができてしまうもので、成熟嚢胞性奇形腫と比べ珍しく、悪性腫瘍の性質を持ちます。いずれもはっきりとした発生原因はまだ明らかになっていません。

卵巣奇形腫があると、どんな症状が出てくる?

卵巣奇形腫では初期症状がほとんどありませんが、大きくなると下腹部にしこりを感じる方もおられます。腫瘍がさらに大きくなると周辺が圧迫されはじめ、卵巣の周りの臓器に影響が出てくるようになります。具体的には、腹痛・腰痛・頻尿・便秘といった症状が現れるようになります。

なお、卵巣奇形腫が良性の場合でも、卵巣茎捻転・卵巣の破裂などの症状に繋がることもあります。卵巣茎捻転とは、卵巣が奇形腫のために重くなり、卵巣、もしくは卵管ごと捻じれてしまい、突然の下腹部痛や激しい吐き気に襲われたり、放置すると卵巣壊死に繋がる恐れのある病態です。

また、ごく稀にですが、免疫システム異常を起こして「抗NMDA受容体脳炎」を合併することもあります。幻聴や痙攣、意識障害が現れた時は、卵巣奇形腫を疑いましょう。

卵巣奇形腫はどうすれば治る?

卵巣奇形腫の治療は主に手術となります。ほとんどが良性のため、サイズが小さければ経過観察の方針となることもしばしばあります。サイズが5cmを超える、すでに茎捻転を起こしている、悪性の疑いがある場合などは手術加療を勧められるでしょう。卵巣奇形腫は良性であってもしばしば再発することがあるため、腫瘍摘出後は経過観察が必要となります。再発した場合も再度手術での摘出となります。悪性の奇形腫では他のがんと同じように術後に化学療法が必要となります。

卵巣奇形腫の手術では、腹腔鏡手術(お腹に数箇所穴を開けるだけの手術で、体への負担が少なく、短い入院期間で済みます)・開腹手術(病巣が大きい、他臓器との癒着がある場合などに行われます)の2つの方法があります。また、術式としては卵巣嚢腫核出術(卵巣表面に切開を加え腫瘍のみを摘出する)と付属器切除術(卵巣と卵管を丸ごと摘出する)の2つがあり、基本的に良性であれば前者が、悪性であれば後者が標準となります(閉経後などでは良性でも付属器切除をすすめられることもあります)。

卵巣奇形腫の疑いがある場合は、まず超音波検査や腹部CT・腫瘍マーカー血液検査などで腫瘍のサイズ・状態を調べ、患者さんの希望も含めて治療方針を考えていきます。

卵巣奇形腫に気づくにはどうすればいい?

卵巣奇形腫は自覚症状がほとんど感じられないことも特徴の一つです。初期段階では普段の生活上では非常に気づきにくいですので、定期的な婦人科検診が重要となっていきます。検査にて卵巣奇形腫が発見された時には、腫瘍がかなり大きくなっていることも多いですので、状態を把握するためにも早め早めの行動が大切です。

なお、卵巣奇形腫は10代~30代と広い年齢層で発生することが分かっていますが、幼児や小児でも可能性は0ではありません。下腹部のしこりや頻尿・便秘・腹痛など、スキンシップも含めて普段から子どもの状態をよく知っておき、親が気づいてあげるようにしましょう。違和感に気づくためには、普段の状態を知っておく必要があるからです。

おわりに:卵巣奇形腫は婦人科検診で早期発見することが大切

卵巣奇形腫は多くの場合良性のものですが、捻れたり破裂することで下腹部の激痛を引き起こしたり、卵巣壊死を招いたりするリスクがあります。自覚症状がほとんどない厄介な病変なので、定期的な婦人科検診を欠かさず受けるようにしましょう。

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