記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
膿胸とは、胸膜の間にある胸膜腔の膿が溜まったことで起こる病気です。高齢者や糖尿病の人など、免疫力が低下しているときに発症しやすいといわれていますが、その他にはどんな原因があるのでしょうか。膿胸の発症メカニズムや代表的な症状を解説していきます。
膿胸とは、肺の表面と胸壁の内面を覆う胸膜に細菌感染症が起き、胸膜の間の胸膜腔に膿が溜まった状態のことです。発症からの期間が3か月以内かそれ以上かで、急性、慢性に分類され、急性膿胸の場合は発熱、胸痛などが主な症状として現れます。
膿胸は、高齢者で寝たきりの人、糖尿病や腎不全、低栄養状態、免疫力が落ちている人がなりやすいといわれています。
急性膿胸の場合、顕著な症状は高熱と胸痛です。また胸水が増加して溜まって肺が圧迫されるので、胸の痛みのほかにも息苦しさや呼吸困難を覚えやすくなります。
激しい咳と膿性痰がみられることや細菌性肺炎や細菌性胸膜炎に引き続いて生じやすいことなども特徴です。
慢性膿胸の場合は、被膜が肥厚化することで肺の膨張を妨げるため、酸素と二酸化炭素の交換が十分に行われない状態に陥りやすくなり、呼吸運動の障害やチョコレート色の膿性喀痰が多くみられるようになります。
ただし必ずしも目立つ症状が現れるとは限らず、特に結核性膿胸の場合、人によっては全く自覚症状がなく生活しているケースもあります。
肺はその表面を直接覆っている臓側胸膜と胸壁の内側を覆っている壁側胸膜に包まれており、この2枚の胸膜の間の空間を胸膜腔と呼びます。胸膜腔の胸水は、肺が胸郭の壁にこすれて傷つかないように、潤滑油のような役目をしています。
胸膜に炎症が起きると、胸腔の胸水が増え、膿のように混濁してしまいます。これが「膿胸」です。
急性膿胸は、先行する肺炎や縦隔(左右の肺の間の空間)炎などから進展したり、胸部手術や食道破裂に合併して発症するケースが多く、慢性膿胸は結核性胸膜炎が長引く場合と急性膿胸のコントロールができないことが原因になることが多いようです。感染源となる菌は、肺炎球菌、口腔内の常在細菌や黄色ブドウ球菌、結核菌など、さまざまあります。
急性膿胸では、胸膜腔にチューブを挿入し膿を排液しながら、原因菌に有効な抗菌薬の投与を行います。広域ペニシリンや第2世代セフェム系の抗菌薬がしばしば用いられます。
膿胸発症後1~2か月間であれば、胸腔ドレナージによる排膿により肺が十分な拡張を取り戻し治癒する場合が多いとされます。
難治性の慢性膿胸では、胸腔ドレナージだけではなく、外科的な処置が必要となることが多いです。特に肺瘻が続く場合や抗菌薬が効果を発揮しない場合は、手術で対応することになります
手術は、胸膜肺剥皮術(肺表面に形成された肥厚した胸膜を剥ぐように除去し、肺の再拡張を図る手術)、開窓術(肋骨を1~2本切り取り胸腔を開放した後、膿胸腔内の洗浄を行い胸腔を閉鎖する手術)など、4つの手法が挙げられますが、いずれもリスクが高いとされます。
膿胸で重要なのは、風邪と症状の似ている急性膿胸を慢性化させないことです。膿胸は、肺の働きを妨げて呼吸困難を引き起こし、悪化すると治療が難しくなるおそれもあります。胸痛など、疑わしい症状を感じた場合は初期のうちに病院を受診しましょう。