記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/5
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
顔に発生するがんのひとつに、「上顎癌(じょうがくがん)」があります。今回の記事ではこの上顎癌について、具体的な症状や治療法、また治療による副作用を解説していきます。
鼻腔のまわりには骨で囲まれた空洞部分が複数あり、この空洞部分は副鼻腔と呼ばれます。そしてこの副鼻腔のうち、目の下にある空洞は「上顎洞(じょうがくどう)」と呼ばれ、ここにできた癌を「上顎癌(じょうがくがん)」といいます。
上顎癌の発症原因は明らかになってはいませんが、慢性副鼻腔炎との関係が深いと考えられています。実際に上顎癌になった人は慢性副鼻腔炎を併発していることが多く、さらに近年の慢性副鼻腔炎患者の減少に伴い、同時に上顎癌の患者数も減少傾向にあるからです。
上顎癌の代表的な症状は、上顎癌付近である頬の痛みです。痛みだけでなくしびれを感じることもあります。
また、症状の出方は癌の広がり方によって異なり、癌が下に広がると歯痛、奥に広がると口が開けにくくなる、鼻の方向へ広がると、鼻の片側から膿のようなどろどろとした鼻水や血が混じった鼻水がでる、目のほうへ広がるとその片目から目やにや涙がでる(さらに癌が大きくなると目玉がとびだしたようになる)、首のほうへ広がると頸部リンパ節へ転移し頸部腫瘤があらわれる、といった症状がそれぞれ現れる傾向にあります。
上顎癌の代表的な治療法は、三者併用療法と呼ばれるものです。これは、抗がん剤動注化学療法と放射線治療と手術の3つの治療法を組み合わせた治療法です。
まず抗がん剤動注療法は、癌につながっている血管に抗がん剤を入れる治療法です。次に放射線治療は、癌を小さくするために行います。これは、手術で取り除く部位を小さくするために行うものです。手術で癌をとる時に除去面積が大きくなると、手術をした後で顔が大きく変わってしまうことになります。そういった事態を防ぐために、手術で取り除く部位が小さくなるようにしておくのです。
上顎癌は放射線療法や抗がん剤が効きやすい種類の癌です。そのため、放射線療法や抗がん剤治療で有効な治療効果が得られることが多くありますが、副作用も起こってしまうという問題点があります。
主な副作用は、身体のだるさや食欲がなくなることです。治療を受けながら通常の生活を送ることができますが、無理をしないことが大切です。しっかりと休息をとるようにしましょう。また吐き気がでることもありますが、栄養失調にならないよう、少量ずつ食べられるものを食べるようにしましょう。必要であれば吐き気止めを使います。
他にも、放射線照射部位の皮膚のトラブルもあります。皮膚の保護に十分に気をつけ、痒みがある時には医師に相談してください。
上顎癌は、副鼻腔炎と関連性の深い病気と考えられています。慢性副鼻腔炎の患者さんで、頬の痛みなど気になる症状がみられたら、早めに専門の医療機関を受診してください。