記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/30 記事改定日: 2019/11/21
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
お酒を飲みすぎてしまう方に注意してほしい「マロリー・ワイス症候群」という病気があります。
今回の記事では、マロリー・ワイス症候群の症状や原因、治療法などについて、全般的な情報をお伝えしていきます。
マロリー・ワイス症候群とは、繰り返し嘔吐を繰り返すことで食道の出口から胃の入り口である噴門部に傷ができ、そこから出血をする病気です。
嘔吐をするときは腹圧がかかるので、食道や胃の噴門部の壁に強い圧がかかり、左右に強く引っ張られます。その影響で粘膜が縦方向に亀裂を起こし、その部位から出血を起こすのです。
上部消化管の内視鏡検査で粘膜裂傷を認めた場合、マロリー・ワイス症候群と診断されます。
比較的男性の発症率が高い病気であり、好発年齢は45~50歳ですが、子供の発症も報告されています。なお、マロリー・ワイス症候群による吐血は上部消化管出血のうち約4~14%を占めているとされますが、自然に治ることもあり、予後の良い病気です。
マロリー・ワイス症候群の代表的な症状は、嘔吐を繰り返した後の吐血、下血です。吐血の場合は口から大量に血液が出ますが、下血になると黒く酸化した血液が肛門から出ます。
出血量はおよそ1000~2000mlと多く、大量の出血がある場合には、貧血症状による立ちくらみが見られることもあり、出血が多いときにはショック状態に陥ることもあります。
なお、通常は胸部や腹部に痛みを伴わず、あってもみぞおち辺りの軽い痛みのみです。強い痛みを伴う時には、食道の壁が全て裂けてしまっている特発性食道破裂を起こしている可能性があります。
マロリー・ワイス症候群のおもな原因は飲酒です。これは大量にアルコール摂取することによる嘔吐の繰り返しが影響しています。
などで嘔吐を繰り返すことで、マロリー・ワイス症候群を発症し吐血することがあります。
マロリー・ワイス症候群を発症した場合、基本的には経過観察が行われます。嘔吐がおさまり傷のある部位へ圧力がかからなくなれば自然と止血するので、出血の影響が少ない時には止血するまで様子を見るのが一般的です。
ただし、内視鏡検査で動脈からの出血が確認され、大量出血の恐れがあると判断された場合には、内視鏡下で止血処置が行われます。
止血処置には
などの方法が用いられ、出血量が多い時には、輸血をして失った血液を補います。
なお、傷の状態や全身の状態によっては、入院しての輸液や潰瘍部の治療が必要になることもあります。
マロリー・ワイス症候群を発症したとしてもほとんどのケースは特別な治療をしなくても自然に改善していきます。
しかし、食道にダメージがある状態ですので、しっかり治るまでは熱いものや辛いものなど刺激になるような飲食物は避け、アルコールは控えるようにしましょう。
また、痛みが続く場合、黒っぽい便が出続ける場合、めまいやふらつきなどの貧血症状がある場合はダメージを受けた食道が炎症していたり、じわじわとした出血が続いている可能性があります。放置せずにできるだけ早く病院を受診しましょう。
治療を受けたあとも、食生活には十分注意し、おかゆや野菜スープなど食道への刺激を最小限に抑えるようなものを食べるようにし、再発しやすい病気ですので、一度でも発症したことがある人は過度な飲酒や過食は控えるようにしてください。
お酒を飲みすぎて吐いてしまうことが多かったり、過食嘔吐の癖があったりする方は、マロリー・ワイス症候群を発症するリスクが高いといえます。嘔吐後の出血がみられた場合は病院を受診し、炎症の状態に合わせて治療方針を決めていきましょう。