高齢者に多い多発性骨髄腫って、どんな病気なの?

2017/11/30 記事改定日: 2019/1/30
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

多発性骨髄腫は血液細胞のひとつが「がん」になってしまう病気であり、発症すると骨の痛みをはじめ様々な症状が現れます。
今回は多発性骨髄腫の基礎知識を紹介していきます。早期発見のためにも、きちんと理解しておきましょう。

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多発性骨髄腫とは、どんな病気?

多発性骨髄腫とは、血液を構成する細胞のひとつ「形質細胞」ががん化する病気です。
形質細胞は骨髄の中で作られる白血球の一種、B細胞から作られており、侵入してきたウイルスから体を守るための抗体を作っています。

しかし、この形質細胞ががん化すると「骨髄腫細胞」となり、単クローン性免疫グロブリン(Mタンパク)という意味のない細胞を作るようになります。
その影響で体内に侵入した異物を攻撃できなくなってしまい感染病にかかりやすくなってしまうのです。

骨髄腫細胞の増加は臓器に影響を及ぼすため、様々な症状が現れるようになります。

高齢者に多い

30~40代の人が発症することもありますが、多くは60代以上で、高齢者に多い病気として知られています。高齢化により、現在は増加傾向にある病気です。

多発性骨髄腫の三大症状

多発性骨髄腫の症状には個人差があり、人によってはないケースもあります。以下は、一般的によく見られる多発性骨髄腫の三大症状です。

貧血

骨髄で骨髄腫細胞が増加してしまうことで、赤血球や白血球の生産が抑えられ、貧血症状が現れたり病原菌に感染しやすくなったりします。
具体的な症状は、めまいやだるさ、動悸・息切れなどです。頻繁な鼻血が見られたり、出血がなかなか止まらなくなったりすることもあります。

骨痛や骨折

骨髄腫細胞が骨を溶かす「破骨細胞」に働きかけるために骨がもろくなり、骨粗しょう症や骨折、骨の痛みを生じるようになります。また、骨のカルシウムが溶け出すことを「高カルシウム血症」といい、脱水や便秘、嘔吐、意識障害を引き起こします。

腎臓機能の悪化

Mタンパクが変異したアミロイドが腎臓の糸球体に吸着すると腎機能が低下し、むくみなどの症状が現れ、進行すると尿毒症となります。

「骨の痛み」は多発性骨髄腫のサイン?

多発性骨髄腫では骨の病変が最も多く見られ、背中や腰などの骨の痛みを訴えて整形外科を受診したときに発覚するケースが半数以上だといわれています。

  • 長く続く骨の痛み
  • 繰り返し痛みが起こる
  • 手や足など、痛みを感じる場所が移動する

以上のような症状が認められる場合は多発性骨髄腫が疑われ、血液内科で詳しい検査を受けることになります。
また、多発性骨髄腫の人は骨がもろくなるので、はっきりとした理由がないのに骨折していることもあります。

背中の痛みや腰痛が筋肉の痛みではなく「骨の痛み」であれば、多発性骨髄腫の兆候であるおそれがあります。
こうした症状に付随し、高カルシウム血症の特徴的な症状である多尿、便秘、食欲不振、吐き気、意識障害が現れる場合も注意が必要です。

多発性骨髄腫の治療

残念ながら今のところ多発性骨髄腫は完治させるのが難しい病気であり、早期に治療を開始しても予後の改善が見られないことから、腎機能障害や骨折、痛みといった症状が現れてから治療を検討するのが一般的です。

治療では、骨髄腫細胞をできる限り減らすための「化学療法(薬物療法)」や「自家末梢血管細胞移植」、症状を抑えるための「支持療法」が中心となります。

化学療法
用いられるのは、ボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミドなどといった薬剤です。
自家末梢血管細胞移植
大量に抗がん剤を投与すると正常な血液を作る能力に影響を及すため、血液を作るための、自身の「造血幹細胞」をあらかじめ保存します。大量の抗がん剤投与後にその造血幹細胞を戻し、造血能力の回復を計るという治療法です。
支持療法
痛みを抑えるための放射線治療などが行われます。

余命と予後

多発性骨髄腫の余命や予後は、症状の強さや進行度などによって大きく異なります。
早期の段階では、5年生存率は80%を超え、がんが進行することなく生存している人は半数を超えます。比較的予後は良いといっていいでしょう。

一方、症状が進行した状態では治療を行っても5年生存率は40%と低くなります。
すべての病気で共通して言えることですが、良好な予後を得るには、早期からの治療が必要になります。多発性骨髄腫は高齢者が発症することが多く、体調の変化に気づかずに見過ごされることも少なくありません。

何らかの体調の変化を自覚した場合は速やかに病院を受診するだけでなく、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。

おわりに:その骨の痛みは危険な症状かも・・・。軽視しないで必ず病院で検査を

多発性骨髄腫は骨の痛みが主症状として現れ、腰痛や背中の痛みで病院を受診したときに発見されることも多いです。完治が難しく症状を抑える治療が中心になるため、早期の段階で発見して適切な治療を行う必要があります。ただの腰痛と軽く考えるのは危険です。

大きな問題がない痛みかどうか確認するためにも、不具合があるときは必ず病院で検査してもらいましょう。

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