記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
多発性骨髄腫は、血液の細胞が「がん化」することで貧血や腎機能障害などの症状が起こる血液のがんのひとつです。この記事では多発性骨髄腫の検査や治療について詳しく解説していきます。
多発性骨髄腫は血液のがんのひとつであり、免疫を担う白血球の一部(「形質細胞」を作りだすリンパ球の一種)ががん化して血液の工場である骨髄の中で増殖し、さまざまな症状を引き起こす悪性腫瘍です。
形質細胞は本来、体内に侵入した異物から体を守る「抗体」をつくりますが、がん化することで「骨髄種細胞」となり、役に立たない抗体「Mタンパク」だけを作り続けます。これにより正常な血液が作れなくなってしまい、貧血や感染症、腎臓機能の悪化などが起こります。また、骨を溶かす細胞を刺激して骨の痛みや骨折、麻痺、脱水症状や精神・意識障害を起こす「高カルシウム血症」を起こすこともあります。
50代以上の男性に多く、進行の速度や症状には個人差があり、症状がなく血液検査や尿検査で初めて発見されることもあります。病気の原因は明らかになっていませんが、骨髄細胞にはさまざまな遺伝子異常がみられます。
「尿検査・血液検査」、「画像検査」、「骨髄検査」などが行われます。
まず、尿検査で尿たんぱくの量を測り、腎臓に障害が起きているかを調べます。血液検査では血がちゃんと作られているかどうか赤血球や白血球、血小板などの数値を測り、骨髄種細胞の有無やカルシウムの値などから骨髄種の進行度合いを調べます。この2つの検査で多発性骨髄腫である可能性を高い確率でみることができます。
さらに、骨のレントゲン(X線)検査やCT、MRI、PET検査などの画像検査を行い、骨髄種細胞の確認や全身の臓器について合併症があるかどうかを調べます。
診断の確定には、骨から骨髄を採取して顕微鏡で骨髄腫細胞の存在や形、悪性度などを詳しく調べる骨髄検査が行われます。また、骨髄以外にも腫れなどがある場合にはその組織の細胞も採取して調べます。
治療は、症状の緩和や合併症の予防、病気の進行を遅らせるために、主に「化学療法」、「支持療法」などが行われます。
化学療法は、骨髄種細胞を破壊して減らし病気の進行を遅らせる薬物療法です。体の状態や効果と副作用のバランスを考え、複数の薬剤を併用します。
ある程度体力がある場合には、「自家末梢血幹細胞移植療法」が行われることもあります。これは大量化学療法の前に自身の幹細胞を採取しておき化学療法後に体内に戻すというものですが、新薬の併用効果が高くなったことから現在では減っています。そのほか、骨の痛みの軽減に放射線療法が役立つことがあります。
支持療法は、がんそのものや合併症、治療による副作用の予防や軽減のための治療で、その内容は感染しやすい場所の治療やケア、感染症の予防や治療のための薬物療法、輸血など幅広いものとなっています。
治療法は目覚ましく進歩しつつあるものの、まだ完治は望めない病気です。日常生活をある程度取り戻すことは可能ですが、基本的にQOL(生活の質)を維持しながら病気と付き合っていくことになるでしょう。自身の思いを担当医に伝え、納得した上で治療を受けるようにしましょう。