記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/4 記事改定日: 2019/3/19
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
粘膜下腫瘍の一種であり、中には悪性のものも存在する「胃粘膜下腫瘍」。この胃粘膜下腫瘍とは、いったいどんな病気なのでしょうか?
症状や検査方法、治療方法などを交えて解説していきますので、早期発見や治療の意思決定に役立ててください。
粘膜下腫瘍とは、粘膜の下にある腫瘍が正常な粘膜に覆われて、盛り上がっているように見える病変です。そして胃粘膜下腫瘍とは、胃の粘膜層よりも深い位置にある粘膜下層や筋層などに腫瘍が発生する状態を指します。
この胃粘膜下腫瘍は、腫瘍の大きさが小さいときは無症状で気づきにくいというのが特徴です。腹痛や不快感を感じることもありますが、このような症状は日常的に感じるもののため、気づかずに大きくなってしまうことも少なくありません。
胃粘膜下腫瘍の種類は1つではなく、基底細胞由来のカルチノイド、リンパ腫、神経系腫瘍、ジスト(GIST:Gastrointestinal Stromal Tumor)、平滑筋細胞由来の腫瘍、脂肪細胞由来の腫瘍など様々です。
治療が不要な良性のものから、治療をしないと命に関わる悪性のものまであります。胃粘膜下腫瘍の中でも悪性度が高く、注意が必要なもので例を挙げると、悪性リンパ腫や脂肪肉腫などがあります。
悪性の胃粘膜下腫瘍が大きくなると、胃の運動が悪くなることによって消化不良が引き起こされ、胸焼けや吐き気・嘔吐などが生じ、それに伴う食思不振や体重減少などが見られるようになります。
また、胃の周辺の神経などを刺激することで腹痛を引き起こしたり、腫瘍がさらに大きくなると病変部の粘膜に潰瘍を形成し、出血を生じるようになります。その結果、慢性的な貧血によるめまいや息切れ、動悸などの症状が見られ、一度に大量な出血が生じると吐血するようになることもあります。
上記でも説明したように、胃粘膜下腫瘍が小規模な状態であれば自覚症状はほとんどありません。あったとしても腹痛や不快感を感じる程度です。
腫瘍が小さい内に発見するためには、定期的に胃の検査を受ける必要があります。
胃粘膜下腫瘍の診断は、胃X線、超音波内視鏡検査、MRI検査、CT検査などで行われます。胃粘膜下腫瘍は、正常粘膜の下に腫瘍が出来ているため、胃がんのように病変の一部を採取・病理組織診断などを行うのが困難です。
超音波内視鏡で検査することで、粘膜下腫瘍の位置を確認したり、腫瘍を断面図で確認することができます。
胃粘膜下腫瘍は大きさが2㎝以下で急激に増大しない場合には、半年に一度程度の定期的な検査で経過観察が行われます。
もし経過観察中に腫瘍が大きくなった場合や、発見時に2㎝以上である場合、病理検査で悪性が疑われる場合などは腫瘍の切除術が行われます。
手術は、小さいものでは腹腔鏡を用いた体への負担が少ない方法で行われますが、腫瘍が大きな場合や周辺臓器への浸潤や転移が疑われる場合には開腹手術が行われます。
また、病理検査の結果、GISTと診断された場合には、転移や術後の再発に対して分子標的治療薬「イマチニブ」の内服治療が検討されることがあります。
胃粘膜下腫瘍は、良性のものから悪性のものまで種類や大きさもさまざまです。
悪性の治療では早期発見が重要になってきますので、定期的に胃の検診などを受けることが大切です。胃粘膜下腫瘍と診断された場合は、医師と相談しながら自分が納得できる方法で治療をしていきましょう。