記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
遺伝性の腎臓病として症例の多いものに、「多発性嚢胞腎」という病気があります。今回の記事ではこの多発性嚢胞腎について、症状や発症の原因、治療法などを解説していきます。
多発性嚢胞腎とは腎臓に嚢胞(水膨れ)ができ、徐々に腎臓の機能が低下していくという病気です。遺伝性の病気で、患者数は全国におよそ3万人ほどと言われています。
多発性嚢胞腎は遺伝子の種類によって「成人型」と「小児型」に分かれますが、多くの場合は成人になるまで発症しない成人型です。子供のころに発症する小児型は稀ですが、症状が重くなる傾向があります。
多発性嚢胞腎の原因は、遺伝子の異常です。両親のどちらかから遺伝して発症します。遺伝子検査で遺伝子の異常を調べたり、超音波検査やCT検査で嚢胞の有無を調べたり、血液検査で腎機能を調べることによって、多発性嚢胞腎かどうか確認することができます。
初期の段階では特に症状はありませんが、腎臓の嚢胞が増加するにつれてお腹が張るようになります。また腎臓の機能が低下する為、食欲不振やお腹の痛み、高血圧、疲労感や血尿、発熱が起こる場合もあります。多発性嚢胞腎が進行すると、肝臓や膵臓、肺にも嚢胞ができ、最終的には慢性腎臓病になります。
合併症として、成人型の患者のおよそ10%に見られるのが脳動脈瘤です。脳動脈瘤とは、脳の血管の一部が膨れている状態で、場合によってはくも膜下出血を引き起こします。また、尿路結石や尿路感染症などを発症することもあります。
現在、多発性嚢胞腎を完治させる治療法は見つかっていません。そのため、腎機能の低下を遅らせる対症療法を中心に治療が行われます。
ただ、薬剤の投与などによって、高血圧症や尿路感染症をきちんと治療すれば、機能低下を遅らせることができる可能性はあります。また、利尿作用のあるV2受容体拮抗薬には、体内の水分を排出することで腎嚢胞の増大を抑え、病の進行を遅らせる効果が期待されています。
なお、多発性嚢胞腎が進行し、重度の腎不全になってしまった場合は、透析や腎臓移植を行う必要があります。
多発性嚢胞腎は、初期の段階では自覚症状がありませんが、嚢胞が大きくなるにつれて徐々に症状が現れます。重症化してしまうと透析や腎臓移植が必要となってしまうので、早期に発見できるよう、早めに医療機関を受診するようにしましょう。