前立腺肥大症 とはどんな病気?どんなことに注意すればいいの?

2017/12/1 記事改定日: 2018/6/21
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

前立腺肥大症は悪化してしまうと尿を出すことができなくなって尿閉に発展しまうこともあります。この記事では50歳以上の男性に多く見られる前立腺肥大症の基礎知識について解説しています。
検査方法や禁忌についても紹介しているので、この機会に覚えておきましょう。

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前立腺肥大症とは

前立腺は男性のみにある臓器です。前立腺は精液の精製や精液を外に流す役割を持つ臓器であり、精子の保護や精子に栄養を与える役割も持っています。前立腺肥大症とは前立腺の働きに支障が出ることによって起きる病気です。前立腺が肥大することによって、尿道が狭くなり排尿することさえも困難になることもあります。

発症の原因と傾向

前立腺肥大症の原因はまだ解明されていません。ただ、「男性ホルモン」が前立腺肥大症の鍵となっているのではないかと考えられています。
前立腺肥大症の患者数は年々増加傾向にあり、50歳以上の男性の約2割が前立腺肥大症を発症しているといわれているほどです。

前立腺が肥大するとどんな症状が現れるか

前立腺肥大症の症状には主に3つの症状が存在しています。

排尿症状
「尿が分かれる」「尿が途切れる」「排尿までに時間がかかる」などです。
蓄尿症状
尿を溜める機能に問題が起こること。主に頻尿の症状を指します。昼間に8回以上、就寝後に1回以上、尿意を感じる場合は頻尿の可能性があります。
排尿後症状
「排尿後に残尿感がある」「排尿をしてもすっきりしない」「尿をした直後なのに、まだ残っている感じがある」などが排尿後症状に当てはまります。また、排尿後、下着に尿が漏れてしまうことを「排尿後尿滴下」と呼びます。

検査と治療について

軽症の前立腺肥大症は薬物療法にて治療を行いますが、症状が重いときには手術が必要になることもあります。

薬物治療では、前立腺の平滑筋の緊張を緩める薬と前立腺自体を小さくする作用がある薬が使われます。どちらの薬も尿道への圧迫を軽減することが目的です。

手術には、経尿道的前立腺切除術、ホルミウムレーザー前立腺核出術、光選択的レーザー前立腺蒸散術、経尿道的マイクロ波高温度治療術など、様々な方法があります。それぞれメリットどデメリットがあり、症状などを考慮して適した方法が選択されます。

尿道ステントでの治療が試みられることもあります。安全性が高い治療法ですが合併症が多い治療法のため、患者の健康状態などが原因で手術ができないときなどにかぎり選択されます。

前立腺肥大症の検査

前立腺肥大症を疑い、病院を受診すると次のような検査が行われます。

① アンケート
前立腺肥大症を診断するためのアンケート(国際前立腺症状スコア)が存在し、どのような症状があり、どの程度の酷さなのかを調べるために記載していただきます。
② 直腸診
肛門から医師が指を入れ、前立腺を触診し、大きさや硬さ、痛みの有無などを診察します。
③ 超音波検査
排尿後の残尿の量や、前立腺の体積を測定します。
④ ウロフロメトリー検査
専用の機械に排尿し、尿の出るスピードと時間を計測します。
⑤ 採血検査
前立腺癌が合併していないか、検診も兼ねてPSA検査を行う場合があります。

前立腺肥大症の禁忌

前立腺肥大症と診断された場合には

  • 抗コリン薬(腹痛などで使われるブスコパンや、気管支拡張薬であるスピリーバなど)
  • 抗うつ薬の一部
  • パーキンソン病の薬の一部
  • アレルギー治療に用いられる抗ヒスタミン薬

の使用は禁忌とされています。膀胱の収縮力を弱め、尿道を狭く収縮させ、尿の出を更に悪くさせてしまう可能性があるからです。しかし、これらの薬剤は一人ひとりの状況によって必ずしも禁忌とならない場合があるため、不安な場合は医師や薬剤師と相談しましょう。

また、前立腺肥大症は、大量に飲酒したことをきっかけに悪化し急に尿が全く出なくなってしまう場合があるなど、飲酒により悪化する事が知られています。こうような状態になったときは、すぐに泌尿器科や救急外来を受診しなければいけません。飲酒についても慎重になる必要があるのです。

おわりに:生活習慣の改善とともに、定期的な検査が重要

前立腺肥大症は、症状が軽い場合は薬物療法での治療が中心となりますが、症状が重いときには手術が必要になってしまうこともあります。特に症状を放置したままにして悪化すると、尿閉に発展し日常生活に支障をきたしてしまいます。早期に治療を開始するためにも、定期的な検査を心がけるようにしましょう。

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