記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/1 記事改定日: 2018/5/21
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
前立腺がんは進行が遅く、65歳以降の発症率が高いことから寿命には影響しないことが多いといわれています。しかし、なかには速く進行するものもあるため定期的な検査は必要です。この記事では前立腺がんの特徴と検査の重要性について解説しています。
前立腺は男性特有の臓器で、生殖に欠かせない前立腺液を分泌する役目があります。前立腺液は精液の一部であり、精子に栄養を与えたり、守ったりする役目があります。前立腺は膀胱の出口にあるため、排尿にも関係してきます。しかし、前立腺についてはまだわかってない事柄が多くあり、詳しいことは解明されていません。
そして、前立腺にがんができる病気が前立腺がんです。前立腺には内腺と外腺があり、前立腺がんの多くは外腺に発生します。
前立腺がんは他のがんと比べると進行が遅いことが多く、死亡につながらないこともあるため、検査を行う事自体を考え直すべき、と述べられる事があります。しかし、海外の大規模な研究によって、定期的に前立腺がん検診を行っている人は、行っていない人に比べて前立腺がんによる死亡が少ない事がわかっています。そのため、積極的に前立腺がん検診を受けることをお勧めします。
前立腺がんの主な検査法としては、血液検査と直腸診があげられます。
がんによって前立腺の組織が破壊されると血液中にPSAという物質が増えます。そのため、前立腺がんの疑いがあるときは血液検査をして血液中のPSA値を調べます。
直腸の前方に前立腺があるので、直腸から医師が指を入れ、前立腺の形状を調べます。硬かったり凹凸があったりすると前立腺がんの疑いが強くなります。
前立腺がんが疑われる場合、前立腺に針を刺して組織を採取して調べます。取った組織は顕微鏡で調べ、がんに関する詳しい情報を集めて正確な診断に役立てます。
骨に転移していないか、前立腺のどこにがんがあるのか、他の臓器やリンパ節の転移などの有無などを確認するためにこれらの画像診断をすることがあります。
自治体などで行われているPSA検診で前立腺がんが疑われた場合は、泌尿器科の受診をすすめられます。泌尿器科を受診すると、多くの場合は前立腺針生検をすすめられますが、体に針を刺す検査ですので、稀ですが、感染や出血のリスクがあります。いきなり侵襲のある生検がすすめられるのは、CTやMRIなどの画像検査では、前立腺がんの診断が難しく、他にがんの有無を正確に判断する方法がないためです。
前立腺生検により前立腺がんの診断がされた場合は、転移の有無を確認するためにCT、MRIなどの画像検査を行い、その結果を踏まえて治療方針を検討することとなります。
PSA検査は、多くの自治体で補助を受けて行う事ができます。詳細はお住まいの自治体や加入されている健康保険組合に確認してください。
前立腺がんは中高年以降の男性に多いことから男性ホルモンが関係していることが分かっています。このほかに高脂肪の食事や肥満、喫煙なども発症リスクが高くする要因だと考えられています。また、家族のなかに前立腺がんになったことがある人がいるかどうかも発症要因の一つと言われています。
前立腺がんは初期にはほとんど症状がなく、比較的緩やかに進行します。
尿が近くなったり、出にくくなったりすることがありますが、これらの症状は前立腺肥大症の症状と非常によく似ています。進行すると下腹部の違和感や血尿なども現れてきます。がんが広がると膀胱の一部までがんが達する場合もあり、さらに進行すると骨に転移して激しい痛みが出たり、肺や肝臓などに転移することもあります。
がんの治療法には手術、放射線治療、ホルモン療法などがあります。
早期なら、前立腺やその周辺の組織を摘出することで根治が期待できます。手術には開腹手術や内視鏡手術などがあります。
放射線治療は開腹の必要もなく、体への負担が少ない治療法です。入院は不要な事が多く、外来で治療が可能です。治療後も生活の質を維持しながら過ごせるというメリットがあります。
前立腺がんは男性ホルモンから栄養を吸収し、増殖していきます。そこで薬物を使い男性ホルモンを減少あるいはブロックすることによりがんの活動を抑えるのがホルモン療法です。
前立腺がんは初期には自覚症状がありません。中年期以降の男性は定期検診を受けることで早期発見や早期治療が可能になります。積極的に定期検診を受けて早期発見に努めましょう。