前立腺がんの治療法 効果だけでなくリスクや副作用も知っておこう!

2017/12/1 記事改定日: 2018/5/18
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

前立腺がんは進行がゆっくりで、発症年齢も高齢になることが多いとされています。そのため、発症しても寿命に影響しにくいといわれていますが、もし治療が必要になった場合はどんな治療が行われるのでしょうか。前立腺がんの治療についてまとめました。

前立腺がんに治療は必要?どんな特徴があるの?

前立腺とは男性の尿道の奥を囲んでいる部分で、男性のみにある臓器です。栗の実のような大きさと形をしている精液の一部を作る生殖活動には欠かせない臓器ですが、失くなったとしても生きていくことはできます。

その前立腺にできるの前立腺がんです。前立腺の外側には前立腺をしっかりと包み込む膜があり、内側には尿道周りにある内腺とそれを囲む外腺があり、この部分に前立腺がんができやすいといわれています。

症状

前立腺がんは、尿が出にくい、排尿回数が増えるなどの症状がみられることもありますが、自覚症状がないことがほとんどです。ただし、がんが転移した場合は血尿や腰痛、骨の痛み等の症状がみられることがあります。

治療せず経過観察のみのことも

前立腺がんは60~65歳以上に多くみられるがんであり、進行が遅いため寿命に影響を及ぼすことがない場合もあります。
しかし、前立腺がんのなかには速く進行するものもあるため、経過観察は必要です。進行すると精のうや膀胱の一部などに広がる恐れや、リンパ節や骨、肺、肝臓などに転移する恐れもあります。

前立腺がんの治療方法

前立腺がんの治療法には、手術療法、放射線治療、薬物治療などがあります。下記で詳しくご紹介していきます。

手術療法

前立腺がんの手術療法は、主に前立腺全摘除術が行われます。手術では、まず全身麻酔を行い、前立腺及び精のうを切除し、後膀胱と尿道をつなぎ合わせます。

身体への負担が大きく、神経などを傷つけてしまい尿漏れや勃起障害などの合併症を引き起こしてしまう可能性もあるため、全身状態が良好な方に向いている治療法とされています。
手術方法には開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術などがあります。

放射線療法

放射線治療は体の外から前立腺に放射線を照射して治療する外部照射療法と前立腺組織内に放射線源を挿入して治療する組織内照射療法(後述)の2種類があります。

放射線を照射することでがん細胞を死滅させ、がんが原因で起こる痛みを取り除く効果が期待できます。また、再発した部分の局所治療としても有効とされる治療法です。ただし、直腸粘膜腫瘍や勃起障害などの副作用を引き起こしてしまう可能性があります。

薬物療法

薬物療法は、手術や放射線治療が困難な場合に行われます。前立腺がんは、男性ホルモンの影響で進行を速める性質があるとされ、男性ホルモンが分泌される精巣の働きを抑制する薬を利用してがんの進行を抑える治療を内分泌療法(ホルモン療法)といいます。

また、がん細胞を小さくするための抗がん剤治療も薬物療法のひとつです。抗がん剤治療は、がんの転移がみられる場合や内分泌治療の効果がみられなかった場合に行われます。

副作用

抗がん剤治療やホルモン治療は前立腺がんに非常に有効な治療法ですが、副作用が現れることもあるので注意しましょう。
前立腺がんで使用される抗がん剤には、食欲低下や嘔気、倦怠感などの一般的な副作用がありますが、好中球減少症や貧血、下痢などが生じることもあります。
また、一般的に広く行われるホルモン療法では、女性の更年期障害に多いのぼせや突然の発汗といったホットフラッシュ、女性化乳房、勃起障害や性欲低下による性機能の低下がみられます。また、骨密度が低下することで骨粗鬆症を引き起こし、転倒などによる骨折のリスクが高くなることがありますので注意が必要です。

カプセルを使った組織内照射療法― 密封小線源療法とは

近年、前立腺癌に対して「密封小線源療法」が行われるようになってきました。
これは、放射線を放出するカプセルを前立腺内に植え込み、前立腺の内部から腫瘍に放射線を当てるという原理の治療法です。

一般的な放射線療法は、体の外側から前立腺に対して放射線を当てますが、前立腺の周囲には膀胱や直腸などの排泄に関わる重要な臓器が存在し、放射線を当てた際にそれらの重要な臓器にまで放射線が及び、ダメージを与えることがあります。

密封小線源療法では放射線は前立腺内にしか及ばないように事前に計算して植え込まれるため、これらの副作用が大幅に軽減できるのが特徴です。
埋め込んだカプセルからは、一年ほど放射線が放出されますが、カプセルは取り出す必要がなくそのままの状態で健康上の問題はないとされています。

おわりに:治療後のリハビリも大切。医師に相談しながら納得のいく治療を

前立腺がんは、医師としっかりと相談しながら納得のいく治療法を選択するようにしてください。また、治療後によりよい生活を送っていくためにも、治療中にリハビリを行って生活の質を向上することも大切です。医師の指示に従いしっかりリハビリに取り組みましょう。

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