お腹に粘液状の腫瘍がたまる珍しい病気、腹膜偽粘液腫とは

2017/12/1

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

妊娠しているわけではないのにお腹がどんどん膨らんでいる場合、ある病気の可能性が考えられます。それは「腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)」です。詳しい症状や治療法について、解説していきます。

腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)とは

お腹の中に粘液状の腫瘍が溜まっていく病気、それが腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)です。お腹にある臓器のいずれかで粘液を出す腫瘍細胞が発生し、その細胞の増殖に伴い粘液がどんどん溜まっていき、お腹が膨れていきます。なぜこのような細胞が発生するのか、その原因は分かっていません。

腹膜偽粘液腫は50歳前後を過ぎた女性に多く発症する病気ですが、男性やそれ以外の年齢で起こることも少なくありません。

腹膜偽粘液腫はとてもめずらしい病気で、日本での患者数は100万人に1.5人程度とされています。症例数も少なく原因も分かっていないため、発症しても治療してくれる病院自体が少ないですし、治療法そのものが確立してからの歴史も浅い、厄介な病気です。

腹膜偽粘液腫の症状

腹膜偽粘液腫では、粘性の腹水が溜まっていく速度は遅く、気づかないうちにお腹の中は腫瘍細胞でいっぱいになっていきます。お腹の痛みやふくれ・吐き気・食欲不振といった症状が起こった場合は、早めに病院で診断を受けてください。放っておくと臨月の妊婦さん並にお腹が膨れてしまうこともあります。またお腹があまりにも膨れると、腰痛や皮膚の伸びを引き起こしたりと、別のトラブルの要因となる可能性があります。

なお、粘液はやがて大きな塊となり、臓器を圧迫し始めるため、周りの臓器にも不調が起こり始めます。例えば腸閉塞となって栄養が行き届かなくなったり、臓器が圧迫されて動かなくなってしまったりして、命を落とすこともあるのです。このように、腹膜偽粘液腫は放置することで死につながるおそろしい病気なのです。

腹膜偽粘液腫の治療法

腫瘍の一種だからと抗がん剤が使用されることもありますが、それでは根本的解決にはなりません。今確立している治療法は腹腔内温熱科学療法というもので、頭文字を取ってHIPEC(Hyperthermic IntraPeritoneal chemotherapy)とも呼ばれます。

腹腔内温熱科学療法では、開腹して目に見える腫瘍をまず切除し、42度に温められた濃度の濃い抗がん剤をお腹に入れます。腫瘍は熱に弱いので、温めた抗がん剤で目に見えないものまで徹底的にやっつけるのです。ただ、この治療法は2~3日は麻酔状態で管理しなければならず、患者さんへの負担も大きいというデメリットがあります。また、この治療法に対して十分に経験を積んだ医師と医療スタッフ、そして専用の機器が揃った専門施設でないと安心して受けることはできません。

おわりに:腹膜偽粘液腫は、腸閉塞などの重篤な疾患につながることも

腹膜偽粘液腫を発症すると、見た目の問題や腹痛を引き起こすだけでなく、腸閉塞などの重大な疾患を招いたりする恐れがあります。腹膜偽粘液腫はまだ認知度の低い病気なので、疑わしい症状があったらまずは専門の医療機関を探し、詳しい検査を受けるようにしてください。

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