記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/1
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「上顎癌(じょうがくがん)」という癌をご存知でしょうか。今回の記事では、この上顎癌がどこにできる癌なのかや、症状や発生原因、治療法など、全般的な情報をお届けしていきます。
上顎癌とは、顔にある上顎洞という部位に生じる癌です。
上顎洞という部位は、頬の骨の出っ張っている所と歯の間にあります。左右の鼻の穴から顔の奥に進んでいくと、トンネル状になっている部分から先に副鼻腔と呼ばれる空間がありますが、上顎洞はこの副鼻腔の中で最大の空洞で鼻腔の外下方に位置します。
上顎癌は上顎洞の粘膜で発生し、上皮にできることが多いのが特徴です。胃がんや子宮がんに比べると患者数は少なく、年間で1000名程度です。かつては耳鼻咽喉科領域の癌の4分の1を上顎癌が占めていましたが、最近では患者数は減少してきています。男女比は男性の方がやや多く、50~60歳代の男性に多く見られます。
上顎癌が生じる原因ははっきりとは解明されていませんが、慢性副鼻腔炎が主な原因だと考えられています。副鼻腔炎を起こした人が治療をせずに放置しておくと慢性副鼻腔炎になり、その状態が長く続くことで慢性的な刺激を受け、上顎癌が発生するリスクが高くなるようです。
しかし、近年慢性副鼻腔炎の治療成績があがり、ほとんどの慢性副鼻腔炎が悪化することなく完治出来るようになりました。それと同時に上顎癌の患者数も減ってきていることから、これら二つの間には因果関係があると考えられています。
なお、その他にはヒトパピローマウイルスへの感染が引き金になっているという説や、クローム(金属)を原因とする研究報告もあるようです。
上顎癌の特徴的な症状は、片方の鼻のみに起こる鼻水や鼻づまりです。花粉症や風邪の症状と似ていますが、片方だけに起こるという点が違います。なお、上顎癌の鼻水には出血や膿が混じり、悪臭を伴います。上顎癌は頬の奥にあたる部位なので頬の腫れやしびれが起こることも多くあります。
また癌の進展した方向によって、症状には違いが出てきます。上方に進展した場合には眼の症状があらわれ、眼が突出したり物が二重に見えたりします。下方に進展した場合には口腔内や下あごに症状が出て、歯が痛くなったり歯ぐきや上あごの腫れがでます。顔の内側に進展した場合には、鼻腔を圧迫したことで起こる鼻閉、鼻出血、膿のような鼻水がでます。顔の方に向かって進展した場合には、顔の痛みや腫れなどの症状が出ます。
上顎癌は顔にできる癌であるため、服で隠すことができず、外科的な治療を行った後の顔の変化が大きいという点があります。また顔の機能が損なわれることで、食べたりしゃべったりするという日常的に非常に重要な動作に支障をきたす恐れがあります。そのため、出来る限り摘出する部位を少なくするように、放射線療法と化学療法などの治療を組み合わせて癌組織を小さくする治療を行います。
その後、外科的な手術療法を組み合わせ、上顎癌を完治させていきます。早期の場合には鼻から内視鏡を入れる手術が行われ、内視鏡を入れるのが困難な場合には歯ぐきを切開して手術を行います。
慢性副鼻腔炎を長期間放置することで、発症リスクが高まるとされる上顎癌。慢性副鼻腔炎の持病がある方は特に、悪臭のある鼻水や鼻詰まりといった異変があれば、すぐに病院を受診するようにしてください。