腎臓病の症状や前兆をチェックして、早期治療に役立てよう!

2017/12/4 記事改定日: 2018/6/21
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腎臓病にはいくつか種類があり、それぞれで症状などにも差があることをご存知でしょうか。この記事では、腎臓病の症状と、セルフチェックの方法を紹介しています。
腎臓病は早期発見が重要になる病気です。基礎知識としてきちんと身につけておきましょう。

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腎臓病になるとどんな症状が現われるの?

腎臓病は、腎臓の糸球体や尿細管に支障が起こることで、腎臓全体の機能が著しく低下してしまう病気のことです。糸球体は血液中の老廃物などを濾過する役割を担っており、尿細管は老廃物や塩分などが尿として排出されるための通り道のことです。これらの働きが低下することで、腎臓の主機能である濾過機能が低下、更に血圧バランスや造血などの他の機能も低下していくのが腎臓病の経過の流れです。

腎臓の機能が低下することで起こり得るトラブルとして、まずは老廃物や塩分が排出されないことによる、重度のむくみや疲労感、老廃物の血中への蓄積による全身機能の低下などが起こるようになります。血圧の安定が損なわれた場合には、慢性的な高血圧が起こり得ます。そしてその結果、動脈硬化や血管性疾患につながることもあります。

また腎臓には造血、骨の強化の役割もあるので、造血不足による貧血や骨密度の低下による骨粗鬆症、骨折なども起きやすくなると考えられます。

腎臓の機能は一度、低下してしまうとそれを元に戻すことは不可能と言われています。よってこうしたトラブルが出てきた場合には、かなり機能低下は進んでいる恐れがあります。

腎臓病のサインに気づくためにセルフチェックしてみよう

腎臓病を発症すると腎機能が低下するために次のような兆候が現れます。以下の兆候が現れたときは早めに病院を受診しましょう。

① むくみ

腎臓は、血液をろ過して老廃物と余分な水分から尿を作る働きをしています。このため、腎機能が低下すると、腎臓のろ過能力が落ち、余分な水分が排出されにくくなるため、足や手首、顔などがむくむようになります。

② 尿の色

腎臓は尿を生成する臓器であるため、腎臓病では尿が正常に作られず、本来なら含まれることのない物質が含まれることがあります。その代表的なものは血液で、腎臓に障害があると尿と一緒に血液が排泄されることが少なくありません。程度は様々なで肉眼的にはわからないものもあれば、尿が真っ赤になるものまで様々です。

③ だるさ、微熱

腎臓病によって体内に老廃物や余分な水分が溜まるようになると、体のだるさや微熱などの全身症状が現れることがあります。

腎臓の機能と腎臓病の種類別の特徴

腎臓は健康維持のため非常に重要な機能を果たしています。

まずは血液を濾過してその中の老廃物、塩分などを尿として排出させる機能です。さらにその中で体にとって必要なものは再吸収するという機能も果たしています。また体内の塩分と水分バランスの正常化にも役割を果たしていることから、血圧の安定にも大きく関係しています。また、造血にも重要な機能を果たしてます。また、腎臓から放出される活性型ビタミンDによって、強い骨を作り出すことにもつながっています。

腎臓病は種類別で症状や特徴が違う

腎臓病は、腎臓自体の問題で発症する場合もあれば、腎臓以外の機能低下の影響で引き起こされる場合もあります。そして一口に腎臓病と言ってもその種類は様々で、出てくる症状に違いが出てくることもあり、加えて経過にも違いが出ることが多いです。

たとえば急性糸球体腎炎の場合は、急激に発症する代わりに回復も早く、早期に発見さえできれば完治も可能とされている腎臓病の一種です。しかしこれが急性進行性糸球体腎炎になると数週間から数ヶ月の間に糸球体が破壊されてしまい、結果として末期腎不全に進行してしまうことも多いといわれています。
このことから考えると、適切な治療方法は「どの腎臓病」を患っているのかによって異なり、症状の進行具合によっても変わってくるといえるでしょう。いずれにしても早期発見が重要なので、気になる症状やいつもと違う違和感があるときは早めに病院を受診しましょう。

腎臓病の検査ではどんなことを調べる?

腎臓病が疑われた場合には、次のような検査が行われます。

① 尿検査

尿を顕微鏡で見てタンパクや血液、細菌、がん細胞などの混入がないかを調べる尿沈渣検査が行われます。通常、尿の中にはタンパクは含まれておらず、タンパクが検出された場合には腎臓に異常がある可能性があります。しかし、発熱や激しい運動後などには一時的にタンパクが検出されることがありますので、更に詳しくどの程度のタンパクが含まれているのか定量検査が行われます。

② 血液検査

血液検査でも腎機能を調べることが可能です。主に血清クレアチニン値とGFRが確認されます。クレアチニンは通常であれば尿と共に体外へ排出されるため、クレアチニン値が上昇している場合には、クレアチニンが正常に排出されておらず腎機能低下が疑われます。また、GFRは腎臓でのろ過量を推定した値であり、この値が低下している場合には腎臓のろ過機能が損なわれていると判断できるのです。

③ 腹部エコー検査、CT検査

腎臓に腫瘍などの病気がないかを調べるために腹部エコーやCTなどを用いた画像検査が行われます。

④ 腎生検

腎臓に針を刺し、その一部を採取して顕微鏡で観察する病理検査です。組織を調べることでどのようなタイプの腎臓病なのかを正確に診断することが可能であり、確定診断には必須の検査です。

おわりに:幅広い役割を担う腎臓だからこそ、腎臓病の症状もさまざま

血液の濾過や尿の排出、造血、骨の強化など、幅広く重要な役割を担っている腎臓。その分、腎臓病では現れる症状にもさまざまなものがあります。気になる症状がみられたら、一度病院を受診してみてください。

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