腹壁瘢痕ヘルニアはなぜ起こる?どうやって治療するの?

2017/12/6 記事改定日: 2019/3/13
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアは、手術の傷跡などが何らかの原因で弱くなることで発症します。傷跡から内臓が飛び出してきますが、初期のうちは症状が出ないことも多いです。今回は腹壁瘢痕ヘルニアとは について解説していきます。

腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアの原因とは?

腹壁瘢痕ヘルニアの瘢痕というのは傷跡のことです。過去になんらかの原因で腹壁に傷がついていると、その部分の筋膜に傷跡が残ります。

代表的なものは腹部の手術のときの傷跡です。腹部を切開して内臓の手術を行うため、普段は腹壁を支えている強靭な組織である筋膜に傷がつきます。手術の後に筋膜は吻合されますが傷跡は残っておりその部分だけが弱くなっている状態です。そこから腹膜に包まれた内臓が飛び出てしまうことを腹壁瘢痕ヘルニアといいます。

普段は筋膜の強い力で内臓はお腹の中に押さえつけられているため、臓器がきちんとお腹の中におさまっています。しかし、縫い合わせた筋膜が元々弱かったり、吻合の仕方が悪かったりすると瘢痕から内臓が飛び出しやすくなります。それ以外にも、吻合した部位に感染が起こった場合や全身の栄養状態が悪いときはきれいに筋膜がつながりにくくなるため、腹膜瘢痕ヘルニアが起こりやすくなります。

腹壁瘢痕ヘルニアの症状

腹膜瘢痕ヘルニアを発症すると腹膜に包まれた内臓が皮膚の下に出てきてしまうので、傷跡がある部位の皮膚が不自然に膨らんできます。

症状が軽い場合には見てもわからないことがあり、そのときには腹部に違和感を感じる程度です。ただ、腹壁瘢痕ヘルニアは腹圧が強くかかったときに大きくとびだしてしまう特徴があるので、立っているときやお腹に力を入れたときに症状が強くなります。

また、ずっと内臓が出ている状態ではなく、出たり入ったりするを繰り返すこともあります。咳をしたときやくしゃみをしたとき、排便時などは腹圧が強くかかるため飛び出しやすくなります。

軽度のうちは痛みがないことがほとんどですが、重度になってくると痛みが出現し吐き気や嘔吐を伴うこともあります。

腹壁瘢痕ヘルニアを起こした部位に腸閉塞が起こってしまうと急激に強い痛みがでます。腸閉塞になると治療をしないと症状が重くなることがあり、重症化するとショック状態になるので注意が必要です。

腹壁瘢痕ヘルニアってどうやって治療するの?

腹壁瘢痕ヘルニアは一度なってしまうと自然に治ることはまずありません。ヘルニア部位は徐々に大きくなってしまうことが多く、状態にあわせた適切な治療が必要です。

ヘルニアが小さく手術を必要としない場合でも、腹帯やヘルニアバンドといったものでヘルニア部分を押さえて悪化を防止した方が良いとされています。

ヘルニア部分が大きくなってきた場合や痛みを伴う場合には手術が検討されます。小さいヘルニアのときにはヘルニアが起きている部分だけを縫い合わせますが、この手術は腹壁瘢痕ヘルニアを再発しやすというデメリットがあります。

そのため、大きなものに関してはメッシュやパッチといったものを使用して傷跡の上から覆ったり、傷跡の奥にはめ込んだりする手術を行うのが一般的です。

腹壁瘢痕ヘルニアの手術は内視鏡化で行う場合と開腹して行う場合があり、入院期間は2~4日ほどとされています。

手術後の合併症は?

腹壁瘢痕ヘルニアの手術は身体への侵襲が比較的少ない手術です。
しかし、術後には以下のような合併症が引き起こされることもあります。

  • 発熱
  • 皮下血腫
  • 術創感染
  • メッシュやパッチの感染

また、術後に激しい運動や力仕事などを行うとヘルニアが再発することもありますので、医師の許可があるまではなるべくお腹に力が入る動作を行わないようにしましょう。

おわりに:お腹に異常がみられるときは、早めに病院で適切な治療を

腹壁瘢痕ヘルニアを一度発症すると、自然に治ることがないため状態にあわせた治療が必要になります。初期のうちははっきりとした症状が現れないこともあるので、お腹を触ってみて少しでも違和感がある場合は必ず医師に相談しましょう。

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腸閉塞(18) 腹壁瘢痕ヘルニア(2) 嵌頓ヘルニア(3)