記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/6 記事改定日: 2018/7/9
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心筋症とは、心臓の筋肉である心筋に異常が起こる病気です。進行すると心不全を引き起こし、命に関わる深刻な症状を引き起こすことがあります。この記事では、心筋症の種類について解説しています。種類別で症状と治療法のことも紹介しているので参考にしてください。
心筋症は、心臓にある筋肉に異常が起こる病気のことで心機能障害を起こします。
心臓は筋収縮してポンプのように血液を体内の隅々に送り出しますが、心筋症になると筋収縮の働きが低下するため、体内に送り出す血液量が足りなくなってしまいます。
すると体内には十分な酸素量や栄養が供給されなくなるため、脳は血液量を増やそうと心臓に信号を送り、心筋はさらに強く筋収縮します。このことが心筋に大きな負担をかけてしまうことになり、この悪循環が進むと心不全という病気になってしまうのです。
心筋症は遺伝やウィルス感染、免疫反応などが主な原因だと考えられていますが、原因不明のものも見られます。
心筋症には大きく分けて肥大型、拡張型、拘束型の3つがあり、症状や原因が違います。
肥大型心筋症は心筋に厚みが増して肥大化します。心室が肥大化すると筋収縮して送り出す血液を妨げるため、運動したときに息切れしたり、胸の痛みを感じるようになります。
拡張型心筋症は筋収縮の働きが弱くなり心臓が肥大化します。
十分な血液を送れなくなった心臓は、より多くの血液を送り出そうと容積を増やすために肥大化する性質があります。この状態が長く続くと送り出しきれなかった血液が滞って心臓がさらに肥大化し、心筋が伸びてしまい筋収縮機能が低下します。普通に歩いているだけで息切れしたり、呼吸が苦しくなることもあります。
拘束型心筋症は普通の心臓よりも柔軟性が低くなり、心筋の働きを弱めます。初期は症状を感じにくいですが、進行すると息切れや呼吸困難、手足や顔のむくみがあらわれます。
不整脈治療に使われるβ遮断薬やベラパミルで改善を目指します。また状態によっては植込み型除細動器の埋め込み、心室筋切除術などの外科的治療法、心臓移植なども選択肢に入ります。
初期症状の場合は利尿薬、ジキタリス拮抗薬など心不全治療薬が使われます。症状が進んでいる場合は、β遮断薬を適時投与して心機能の回復を目指します。また血栓が疑われる場合は、ワルファリンなどの非ビタミンK阻害薬経口抗凝固療法を使用します。
対症療法が中心になっており、心不全や不整脈、血栓や塞栓症などへの治療が行われます。
心不全には利尿薬を用いるのが一般的です。また不整脈の治療にはジギタリス製剤やカルシウム拮抗薬などを服用して心拍数のコントロールを目指します。
心臓内に血栓が疑われる場合は、ワルファリンなどの抗凝固薬を処方されます。
心筋症は心臓移植の適応となります。
心臓移植は脳死判定を受けた患者から取り出した心臓を代わりに植え込むことで、正常に近い心機能を得るという治療方法です。
日本では脳死患者からの移植が法的に認められていますが、海外に比べて実施件数は圧倒的に少ないのが現状です。日本で心臓移植を受けるには、まず移植施設に認定された医療機関で移植の適応の可否が判断される必要があります。これは、心筋炎の状態だけでなく、心臓以外の病気や全身状態などを加味して移植に耐えうる体力があるかが判断されます。
そして、移植の適応と判断された場合には、移植に関するリスクなどを十分説明されたうえで日本臓器移植ネットワーク(JOT)に臓器移植希望者として登録されます。
移植希望者に登録された後は、「待機者」としていつ移植が行われてもいいように、心筋炎の状態や感染症などの全身状態に注意しながら治療が行われ、自分に合ったドナーが現れるのを待ちます。ドナーが現れて移植候補者に選ばれた場合には、JOTから連絡が入り、一時間ほどで移植を受けるか否かを決めなければなりません。
この間のJOT、病院、患者間の連携は移植コーディネーターが行いますが、患者はいつドナーが現れてもいいように、移植へ向けて常に心の準備と体調管理をしておく必要があります。
移植手術は5~6時間ほどで終了することが多く、移植後は早期からの離床とリハビリがすすめられ、拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤の服用が必要となります。
心筋症治療は心臓の働きや血栓などの状態を経過観察しながら行われるため、医師の指示に従うことが大切です。
処方された薬を飲むと体調が良くなりますが、だからといってこれで十分だと勝手に服用を止めたり、減らしてしまうとぶり返す恐れが高くなり、最悪の場合は命に関わります。
処方薬は心臓の働きを助けたり、浮腫の改善、不整脈などの発作抑止、血栓を溶かすことで血液の流れをスムーズにして心臓への負担を軽減してくれるものです。普段の生活を安全に過ごすためには欠かせません。心筋症は一生付き合っていく病気になるため、医師と信頼関係を築きじっくりと治療に取り組みましょう。