記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
継続的な腹痛や嘔吐などを引き起こす「急性膵炎」。この急性膵炎は、アルコールの摂取によって発症する場合がほとんどとも言われますが、果たしてそれは本当なのでしょうか?治療法などと併せて解説していきます。
膵臓には、インスリンというホルモンを分泌する働きと、消化酵素をだして食物の消化を助けるという働きがあります。通常は、食べ物を食べた刺激により膵臓から消化酵素が出され、膵管を通って十二指腸に送られます。しかし、何らかの原因で膵臓から出された消化酵素が膵臓自体に働いてしまうことがあります。すると消化酵素で攻撃された膵臓はむくみ、壊死、出血を起こし急性膵炎となります。
この原因として考えられるのが、胆石が詰まって膵管の内圧が上昇したこと、アルコールなどの刺激で膵液の分泌が過剰になったこと、感染した胆汁が膵管内に逆流したことなどです。急性膵炎は腹痛といった症状で始まることが多いので、他の消化器系の病気と間違われることも多く、発見が遅くなることがあります。
急性膵炎の特徴的な症状は、上腹部に感じる痛みです。痛みの程度には個人差があり、非常に激しいものから軽いものまで様々ですが、痛みが継続的に続く場合がほとんどです。また、吐き気を伴い嘔吐することもありますが、嘔吐しても腹痛はおさまりません。痛みは数日かけて徐々に強くなる場合と急に発症する場合があり、さらに痛みの部位も移動することがあります。
他には、食欲不振や腹部の膨満感を感じる人も少なくありません。また、慢性膵炎に多く見られる背部痛も、まれに見られます。
急性膵炎の原因は主にアルコールによるものです。アルコールを摂取することで、それが刺激となり膵液の分泌を活発にしてしまうのです。また、アルコールを分解する過程でできた物質が膵臓を直接傷つけ、急性膵炎を起こす可能性があるとも考えられています。
次に多い原因が胆石によるものです。胆石が移動してきて膵液の出口を塞いでしまうと、膵液がうまく流れなくなり、膵臓に逆流してきて急性膵炎を引き起こします。
他には、原因がはっきりとわからない突発性のものも相当数あると言われています。なお、男性はアルコールが原因で起こることが多く、女性は胆石が原因で起こるものが多いようです。
急性膵炎の治療法は、絶食と絶飲です。口から食物を入れると膵臓から消化酵素が分泌されて膵臓の状態がより悪くなってしまうので、輸液により必要な水分と栄養を補い、膵臓に十分な安静を与えます。また炎症によりたくさんの水分が失われているので、輸液は多めに行います。
痛みが強い場合には鎮痛薬を使用したり、蛋白分解酵素阻害剤を用いて自己消化している酵素の量を抑えます。また、炎症に対して抗菌薬を使うこともあります。
膵臓を安静に保っているうちに徐々に改善していけば治療は成功ですが、それだけでは良くならない時には重症化している可能性があるので、入院治療が必要になることもあります。
アルコールの過剰摂取だけでなく、胆石が原因で急性膵炎が引き起こされることもあるので、飲酒の習慣がない方も発症に注意が必要です。上腹部の痛みが継続するようであれば、重症化する前に、早めに病院で検査を受けましょう。