肩鎖関節脱臼とは ~ 鎖骨と肩甲骨の間の関節が外れたら ~

2017/12/11

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肩鎖関節とは、鎖骨と肩甲骨をつなぐ関節のことです。この部分の骨がずれてしまうことを肩鎖関節脱臼といいます。この記事では、肩鎖関節脱臼になるとどのような症状が起こるかについて解説しています。また、治療方法について解説します。

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肩鎖関節脱臼とは

肩鎖関節脱臼とは、鎖骨と肩甲骨をつなぐ関節「肩鎖関節」が正常な位置からずれている状態です。
肩鎖関節は鎖骨の外側の末端部に位置しています。関節とはいっても肩鎖関節自体には大きな可動性はありません。そして肩鎖関節は、肩鎖靱帯と烏口鎖骨靱帯、僧帽筋、三角筋で固定されています。これらの靭帯や筋肉が損傷することで肩鎖関節脱臼が起こります。

肩鎖関節脱臼は損傷度合によって分類わけされています。

Ⅰ型・・・脱臼ではなく捻挫レベルの損傷。部分的な痛みしか起こらない状態です。
Ⅱ型・・・亜脱臼といわれる状態。烏口鎖骨靱帯の部分的な損傷はみられる。X線(レントゲン)で確認できる程度のズレが起こる
Ⅲ型・・・この段階で脱臼とみなされます。肩鎖靱帯と烏口鎖骨靱帯が断裂し、僧帽筋と三角筋は鎖骨の末端から外れるケースが多いとされます。
Ⅳ型・・・後方脱臼と呼ばれます。肩鎖靱帯と烏口鎖骨靱帯が断裂し、僧帽筋と三角筋が鎖骨の末端から外れ、鎖骨が後ろにずれます。
Ⅴ型・・・高度脱臼と呼ばれ、僧帽筋と三角筋は鎖骨の外側3分の1から外れた状態になってしまいます。肩鎖靱帯と烏口鎖骨靱帯も完全に断裂しています。
Ⅵ型・・・鎖骨の末端が下側にずれる非常に珍しいケースで、下方脱臼と呼ばれます。

肩鎖関節脱臼の原因

肩鎖関節脱臼の原因のほとんどは肩に直接強い衝撃が加わることです。
アメリカンフットボール、ラグビーなどは、転倒したりすることが多いため肩鎖関節脱臼を起こしやすいスポーツといえるでしょう。また、柔道では投げられて肩から落ちたとき、自動車事故ではぶつかったときの衝撃が肩に強くかかってしまったときなど肩鎖関節脱臼が起こります。
普段の生活の中でも、転倒したときに肩から落ちてしまうと肩鎖関節脱臼になることがあります。これは転んだときに手をつかずに肩から着地するような転び方をすると起こります。

肩鎖関節脱臼の症状

肩鎖関節脱臼の症状は程度によって大きな差があります。当然程度が軽いほうが症状は軽くなりますが、肩鎖関節部位が動いていないときでも痛みがでて、肩を動かすとさらに痛みを感じます。そして、痛い部位を押さえるとさらに痛みが増し、徐々に関節周囲の腫れが出てきます。
Ⅲ型以降になってくると鎖骨がずれているのが外から見てもわかるほどになり、ずれてとび出している部位の骨を押すとピアノの鍵盤のように動きます。これは固定している靭帯が傷ついたり切れてしまっているからです。肩の痛みで腕を動かせなくなると、肩周辺の筋力の低下や肩鎖関節の可動域低下がみられることもあります。

肩鎖関節脱臼の治療法

肩鎖関節脱臼の治療法はⅠ型からⅥ型の分類によって異なってきます。
程度の軽いⅠ型~Ⅱ型の場合は、手術ではなく三角巾での固定をして安静を保ちⅠ型のときには固定期間は3~4日、Ⅱ型のときは2~3週間を目安に固定し、ある程度症状が治まってきてから徐々に動かしていきますます。大半の場合では、その後2カ月は肩鎖関節の安静を保つため重いものを持ったり激しいスポーツをすることは禁止されます。

Ⅲ型の場合には今後の生活で肩鎖関節をよく使うような生活をする人やその可能性のある若年者に対しては手術を行い、高齢者などはⅡ型と同様の保存療法で治療します。Ⅳ型~Ⅵ型の場合には手術が必要です。どの手術でも脱臼部位を正常な位置に戻す手術をして、以後3ヶ月間は肩鎖関節の安静を保って靭帯の修復を待ちます。

おわりに:肩鎖関節脱臼は重症度によって治療方法が異なる。必ず病院で適切な治療を

肩鎖関節脱臼は重症度によって治療方法が違ってきます。そのため「過去に肩鎖関節を脱臼したことがあるから」と自己判断で処置してしまうと、症状が長引くなどして、治癒がうまくいかない可能性があるのです。転倒して肩を強く打ったり、交通事故で肩に衝撃を受けた場合は必ず医師にその旨を伝えて検査をしてもらいましょう。

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