記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/1 記事改定日: 2019/2/20
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
尿や尿失禁など、さまざまな排尿トラブルの総称である「排尿障害」。今回の記事ではこの排尿障害について、種類や原因、治療の方法について解説していきます。
排尿障害は、排尿がスムーズにできない状態や排尿が正常に行われない状態を指します。排尿に関する障害全般を指す言葉であるため、例えばトイレの回数が多くて困るとか、はずみで失禁してしまうことも含まれます。
一方で残尿感が残って気持ち悪さを感じるなど、排尿に対するストレスも該当することがあります。
通常は自分の意思で尿道括約筋をコントロールすることで、自由に排尿や蓄尿ができるのですが、何らかの原因で尿道括約筋がコントロールができなくなってしまうと思うように排尿できない、排尿時に不快な感じがするといった排尿障害になってしまうのです。
排尿障害は、大きく尿失禁と頻尿、尿排出障害に分けられます。
尿失禁は、自分の意思とは関係なしに排尿されてしまう症状です。尿失禁の中でも種類があり、くしゃみなど腹圧がかかることで発生する「腹圧性尿失禁」と、突然尿意に襲われて我慢ができなくなる「切迫性尿失禁」の2つが代表的です。
頻尿とは、飲酒など明らかにトイレの回数が多くなる要因がないにもかかわらず、昼と夜合わせて10回以上トイレに立ってしまう状態のことです。ちなみに、眠りについたのにトイレに何回も行くことを夜間頻尿と言います。
尿排出障害とは、膀胱内に溜まった尿を上手く排出できない状態のことです。
通常、膀胱内に200~300mlほどの尿が溜まるとその刺激が脊髄を通って脳に伝えられ、尿意が引き起こされます。この経路のどこかに異常が生じることで、尿意を感じられなくなることや、膀胱や尿道に何らかの異常が生じることで尿が正常に排出できなくなるのです。
過剰な尿が膀胱内にたまることで、腹痛や腹部膨満などを引き起こすことがあり、尿路感染症を発症するリスクも高くなります。
排尿障害の原因はさまざまなものがありますが、もっとも代表的なのは筋力の低下です。とくに女性の排尿障害の多くは、筋力の低下が原因といわれています。
一方、男性の排尿障害に多い原因としては、前立腺肥大が挙げられます。前立腺は年齢を重ねることで小さくなるか大きくなるかのいずれかの動きを見せますが、肥大していく場合、尿道が前立腺によって圧迫されて排尿障害を起こすことがあります。
そして、男女問わず排尿障害の原因となりうるのが、神経障害です。神経障害によって排尿に関する動きが制限され、コントロールが効かなくなることがあります。こうした神経障害は脳神経や脊髄の損傷などでなることもあります。
排尿障害の治療は、どのような症状があるのかによって症状によって大きく異なります。それぞれの治療法か以下の通りです。
尿失禁にはいくつかのタイプがありますが、骨盤底筋の筋力低下などによるものは減量や骨盤底筋体操などの対策が必要になります。しかし、これらの対策で十分な効果が得られない場合には、メッシュテープを尿道の下に通して尿道を支える手術が行われることもあります。
一方、過活動膀胱などによる突然の切迫した尿意による尿失禁では抗コリン薬などの薬物療法とともに飲水コントロールや膀胱訓練などの指導が行われます。
頻尿の原因は多岐に渡り、それぞれの原因を解消していく治療が必要になります。多くは飲水の制限や膀胱訓練などによって改善しますが、男性では前立腺肥大が原因になっていることも少なくありません。この場合には、α1受容体遮断薬や抗男性ホルモン薬などの薬物療法が行われ、効果がない場合には手術による切除がなされることもあります。
尿排出障害では、定期的にトイレに行き排尿を促す訓練などが行われますが、高度な前立腺肥大や神経障害で排尿自体ができない場合には、尿道口から膀胱にカテーテルを通して人為的に尿を排出させる治療が必要になることがあります。
頻尿や尿失禁などの自覚症状があっても、恥ずかしさからなかなか病院を受診できない方も少なくないようです。ただ、排尿障害は放置するとまた別の疾患につながる恐れがあるため、早めの対処が重要です。