慢性腎不全の原因と症状の管理で重要なこととは!?

2017/12/5 記事改定日: 2018/8/21
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腎不全には、おおまかに「慢性腎不全」と「急性腎不全」がありますが、慢性腎不全になるとどういった症状や原因は何なのでしょうか?どうやって治せばいいのでしょうか?
詳しく解説していきますので、参考にしてください。

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慢性腎不全で大切なこととは!?

腎臓の機能が正常に保たれなくなる状態を、腎不全と言います。何らかの原因で腎臓の機能が落ち始め、短期間で急激に腎機能が悪くなってしまう腎不全を急性腎不全と呼びますが、一方の慢性腎不全は、病状の経過がゆっくりで数カ月から数十年かけて徐々に腎機能が悪くなっていくことが特徴です。

腎臓の機能が悪くなるような持病がある場合には、慢性腎不全の発症リスクが高まります。特に多いのが糖尿病の合併症の糖尿病性腎症で、他には慢性腎炎や高血圧によって起こる腎硬化症、腎盂腎炎から起こることもあります。

急性腎不全の場合には、早期に適切な治療を行うことで回復の可能性がありますが、慢性腎不全の場合には完全に回復する可能性は低く、病状を悪化させないようにしていくことが重要になります。

慢性腎不全の症状には、どんなものがある?

慢性腎不全になると、腎臓の機能が低下して尿量のコントロールが適正に行えなくなります。そのことで夜間の尿量が増え、寝ている時にトイレで起きる回数が増えます。さらに腎機能が悪くなってくると、尿を作る機能が悪くなるので尿が作られなくなり、その結果身体の中に余分な水分が溜まることでむくみや高血圧を起こします。

また、腎臓で排出されるはずの老廃物が身体に溜まることで頭痛や吐き気が起きたり、疲れやすさとなってあらわれたりします。身体のイオンバランスの乱れによる身体のだるさや、呼吸困難という症状もあります。他には赤血球をつくるホルモンが分泌されなくなることで貧血を起こしやすく、ビタミンDの不活性によって骨がもろくなるという症状がでることもあります。

慢性腎不全の原因は?

慢性腎不全を起こす代表的な原因のひとつが糖尿病です。糖尿病になって血糖のコントロールが適正に行われていない状態が続くと、高血糖の状態が続き腎臓の血管が破壊されやすくなります。そして最終的には糖尿病性腎症を起こします。そうなると腎臓の機能が正常に保たれなくなり、慢性腎不全の状態に陥ります。

他の原因には、腎臓のろ過機能を行う部位である糸球体に炎症が起こる糸球体腎炎や、腎盂腎炎、腎臓の先天的な病気、腎機能に関係する部位の腫瘍などがあります。また、高血圧によって腎臓の血管が動脈硬化を起こし、その状態が続くことで腎機能が落ち、慢性腎不全になることもあります。

慢性腎不全の治療法

慢性腎不全になってしまうと、完全に治すことは難しいため、進行を遅らせる治療が行われます。治療法のひとつが薬物療法です。具体的には、血圧を下げる降圧薬、尿の排出を促す利尿剤が使われます。電解質の補正の場合には、リン吸着材やカリウム吸着材を使用します。その他にはステロイドや免疫抑制剤が使われることもあります。

また、十分なカロリー摂取をして、塩分やタンパク質、カリウム、リンは制限するなどの食事療法も有効とされています。水分量は腎機能にあわせて適切な量にします。そして、生活の中で安静にする時間を増やす安静療法も、腎臓の機能の保持に役立つと考えられています。

なお、慢性腎不全の治療のもうひとつの大きなポイントは、慢性腎不全による合併症を防ぐことです。慢性腎不全は病状が重くなると、尿毒症などを起こし生命を脅かす危険性がでてきます。そのような時には透析を行い、合併症を予防します。

末期腎不全の治療について

末期腎不全では著しく低下した腎機能が元に戻ることはなく、放置すると体内に水分やカリウムなどの電解質、老廃物などが蓄積して死に至ることもあります。
このため、失われて腎機能を補うために「腎代替療法」が必要となります。

腎代替療法とは、人工透析や腎移植などによって腎機能を補う治療法であり、腎機能が正常の人の10%以下になった段階で導入されるのが一般的です。
腎代替療法には、人工透析と腎移植がありますがそれぞれ次のような特徴があります。

人工透析

人工透析には、血液透析と腹膜透析の二種類があります。
血液透析とは、血液を外部の機械に循環させ、その機械が血液中から余分な水分や老廃物を除去し、きれいな血液を体内へ戻すという治療法です。一般的には一回4~5時間の透析を週に三回行わなければならず、患者の負担は大きなものになります。

一方、腹膜透析とは、腹腔内に通した管で透析液を注入し、腹膜の機能を利用して血液をろ過する治療法です。日中に行うCAPDや睡眠中に行うAPDがあります。自身で行える透析のため、通院は一か月に一回程度であり、血液透析よりも患者への負担は少ないです。しかし、腹膜の機能が低下した場合には別の代替療法を検討する必要があります。

腎移植

腎移植とは、健康な腎臓を移植して正常な腎機能を得る治療法です。家族などから片方の腎臓を移植する「生体腎移植」と死後検体から移植する「献腎移植」があります。
腎移植では、手術後の拒絶反応を抑制するために免疫抑制剤などを飲み続ける必要がありますが、透析などの代替療法を続けなくても腎機能を維持することができるのが最大のメリットです。

このように、人工透析と腎移植は同じ「腎代替療法」でも全く異なる治療法です。それぞれにメリットもデメリットもあるため、ライフスタイルや体調などを考慮して納得のいく治療を選択するようにしましょう。

おわりに:腎機能の回復が困難な慢性腎不全。糖尿病の人は特に注意を

急性腎不全は早期に治療を行うことで腎機能が回復する可能性がありますが、慢性腎不全になると腎機能自体を回復させることは難しくなってしまいます。糖尿病や高血圧など、慢性腎不全を発症するリスクの高い方は特に注意しましょう。

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