神経線維腫症Ⅱ型(NF2)の基礎知識を解説!

2017/12/5

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

神経線維腫症Ⅱ型(NF2)は、脳神経や脊髄神経、末梢神経などに複数腫瘍ができる病気です。さまざまな症状が現れますが、どのように治療すればいいのでしょうか。神経線維腫症Ⅱ型(NF2)の基礎知識を紹介していきます。

神経線維腫症について

神経線維腫症とは、腫瘍が、体中のさまざまな神経(脳神経、運動神経、感覚神経を含む)に沿って成長することが原因となり、非神経組織(例えば骨や皮膚)に影響を及ぼすことで様々な病態をしめす遺伝疾病の総称です。
原因となる遺伝子の染色体上の場所の違いから、Ⅰ型、Ⅱ型、シュワノマトーシスの3つの疾病に分類されます。

神経線維腫症Ⅱ型(NF2)とは?

神経線維腫症Ⅱ型(NF2)は、脳神経や脊髄神経、末梢神経に神経鞘腫、頭蓋の内や脊髄には髄膜腫など、数多くの腫瘍が出来る病気です。

最も多い症状は聴神経鞘腫による難聴やめまい、ふらつき、耳鳴などの症状です。特に片耳の聞こえが悪い状態になりやすいといわれています。
次いで多いのは脊髄神経鞘腫の症状で、手足のしびれ・知覚低下・脱力などであり、三叉神経鞘腫の症状として現れる顔面のしびれや知覚低下が起こることもあります。その他、痙攣や半身麻痺、頭痛、カフェ・オ・レ斑(茶褐色の皮膚の色素沈着)が現れたり、若年性白内障による失明が起こることもあるのです。

発症年齢は10歳以下から40歳以上とまちまちですが、多くのケースでは10~20歳代で発症する特徴があり、この病気の発症には遺伝が関係していることがわかっています。両親のいずれかが神経線維腫症Ⅱ型であれば、子供の50%は発症しますが、家族歴がなく突然変異で発病するケースも半数以上あるといわれています。

神経線維腫症Ⅱ型(NF2)の原因は?

神経線維腫症Ⅱ型は、体の細胞の中にある染色体のうち第22染色体長腕22q12にある遺伝子に異常が起こり発症します。この遺伝子が作り出す蛋白質はMerlin(マーリン)と呼ばれ、正常な状態では腫瘍の発生を抑制する働きがありますが、Merlin(マーリン)の遺伝子に異常が生じ通常の機能を果たさなくなることが発症の原因ではないかと考えられています。しかし、遺伝子に異常が起こる原因については判明していません。

神経線維腫症Ⅱ型(NF2)はどうやって治療するの?

薬物療法、遺伝子治療はいまだ困難であり、腫瘍による症状が出現したら、手術による摘出が必要とされます。特に若年者では腫瘍が成長し、急速に難聴などの神経症状が進行することがあります。両側聴神経鞘腫など頭蓋内腫瘍の成長を制御できない場合には、生命の危険も高いといわれています。
ただし、手術して腫瘍を摘出しても多くの場合聴力はなくなり、顔面神経麻痺を合併することもあります。外科手術の他、ガンマーナイフなどの放射線手術も小さな腫瘍には有効とされます。

おわりに:定期的な検査で病気の状態を確認しよう!

神経線維腫症Ⅱ型(NF2)の人は、症状の状態を確認するために毎年1~2回の定期検査(神経学的検査・聴力検査・頭部MRI・脊髄MRI・白内障検査など)が必要です。また、遺伝性の病気なので、家族の方も検査を受けることが推奨されます。比較的若年で発症する家系と比較的晩年に発症する家系があるため、特に家系の発症年齢時期には忘れずに検査を受けましょう。

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