潰瘍ができる病気にはどんな種類があるの?

2017/12/4 記事改定日: 2019/5/22
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「潰瘍」を伴う病気といえば、何が思い浮かびますか?多くの方は、きっと皮膚や胃潰瘍を思い浮かべるのではないでしょうか。ただ、潰瘍を伴う病気は他にもいくつかあります。詳しくは以降でご紹介していきます。

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潰瘍とは?

潰瘍とは、粘膜や皮膚などに生じる組織的な欠損のことです。炎症や細菌への感染、また部分的な血行障害などが引き金となり、急速あるいは時間をかけて組織が損なわれていきます。

どれくらいの範囲で、またどれくらいの深さで組織が欠損していくのかはまちまちですが、比較的程度が浅い場合には、潰瘍ではなくびらんと言う言葉が使われることもあります。

潰瘍になるとその部分の組織が壊死し欠損してしまうわけですから、その部分が関係している健康機能に著しい障害が出てくることも考えられます。

消化器に潰瘍ができる病気

胃潰瘍

潰瘍を伴う病気として広く知られているのが胃潰瘍です。
胃潰瘍は、胃液の作用が亢進することで胃に炎症が発生し、それに対抗するため胃粘膜の機能が低下してしまうことで、組織欠損が発生することで発症します。

胃の働きを調節している自律神経を狂わせる強いストレスや睡眠不足、ピロリ菌などの感染などが主な原因です。

胃潰瘍には急性と慢性のふたつの種類があり、急性の場合はびらんが発生することが多く、慢性の場合は組織欠損が円形で、単発に起こりやすいという傾向があります。早期に完治する一方で再発を繰り返すことも多く、40~50代の年齢層は特に罹患しやすい症状のひとつです。

十二指腸潰瘍

十二指腸潰瘍も、潰瘍を伴う病気の一種です。十二指腸は小腸の一部で胃から続いており、胃から送り込まれてきた食べ物と消化酵素を混合させ、吸収を促進する作用を担っています。ただし、この十二指腸の内側は胃に比べる非常に弱くデリケートであるため、炎症からびらん、そしてびらんから潰瘍への進行が速いのがひとつの特徴です。十二指腸潰瘍を発症すると、出血や穿孔(組織の欠損が進行することで破れてしまい、内容物が漏れ出てくること)が発生します。

十二指腸潰瘍の原因としては、胃酸と内部粘膜のバランスの崩れ、ピロリ菌への感染、ストレスなどが考えられます。若い人でも発症する傾向があり、ストレス社会の日本では20代で罹患する人も少なくはありません。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜表層に炎症が生じ、潰瘍やびらんが形成される病気です。発症メカニズムは解明されていませんが、自己免疫の異常や食生活の変化などが発症に関与していると考えられています。

下痢や下血、腹痛など頻繁に現れ、重症な場合には発熱や体重減少、下血による貧血などの症状が見られることもあります。病変が生じる部位にも個人差があり、直腸のみの場合もあれば大腸全体に発症するケースも少なくありません。

また、炎症を繰り返すことで大腸の狭窄や腸管運動の低下による巨大結腸症を発症して手術が必要になるケースもあります。

さらに、潰瘍性大腸炎はよくなったり、悪化したりを繰り返すのも特徴の一つです。長期間にわたって炎症を繰り返すことで大腸がんを発症するリスクも高くなるとされています。
治療やステロイドや免疫抑制剤による薬物療法が主体となりますが、再発を予防するためにもしっかりと治療を続けていくことが大切です。

目にできる潰瘍、角膜潰瘍とは

潰瘍は目にも発生することがあり、その一例として挙げられるのが角膜潰瘍です。
この前段階として角膜びらんと呼ばれる症状があるのですが、これに対して角膜潰瘍は角膜表皮だけでなくその奥の組織、実質や内皮にまで欠損が及び、それにより角膜が薄くなったり濁ったりしてしまっている状態を指します。

角膜は外から入ってくる光を屈折させ、瞳の奥の網膜に像として結ばれるのを助ける役割を持っています。
角膜潰瘍とはそのような、見ることに対して重要な役割を果たしている部分に欠損が発生するわけですから、視力に障害が出やすい症状です。
特に症状が重度であれば、治った後にも視力障害が残るリスクがあり、更に穿孔が起きていた場合には失明に至ってしまう恐れもあります。

原因としては細菌感染や外的衝撃、神経系への異常や免疫異常などがあります。

おわりに:皮膚や胃だけでなく、目でも潰瘍が起こることがある!

潰瘍というと消化器の病気を思い浮かべる方が多いのですが、実は目でも角膜潰瘍という形で潰瘍を起こす場合があります。ご紹介した病気の症状が現れたら、重症化する前に病院を受診してください。

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