記事監修医師
メディアージュクリニック青山、皮膚科
田中 美帆 先生
2018/3/23
記事監修医師
メディアージュクリニック青山、皮膚科
田中 美帆 先生
擦りむいた跡などにできる「かさぶた」。特に子供の頃はしょっちゅうできたものですが、そもそもこのかさぶたには、いったいどんな役割があるのでしょうか?かさぶたができるメカニズムなどと併せて解説していきます。
怪我などでの出血による血液の流出を防ぐこと、それがかさぶたの役割です。フタをすることでそれ以上は血は流れていきません。逆に、外からごみや細菌が傷口に入ってくるのも防ぐことができます。怪我をした場合、絆創膏を貼りますが、人間の体自身にも同じ役割を持つものがあるというわけです。
かさぶたは、血液中に含まれている血小板が材料となり作られます。詳しい工程については、次の項をご覧ください。
まず、怪我をして出血すると、傷口からできるだけ出血を減らすために血管の収縮が起こります。それと共に血小板が集まってきて、塊を作って傷口をふさぎはじめます。この集まった血小板からは酵素が出てくるのですが、それが変化するとフィブリンという繊維状のタンパク質になります。そして、このフィブリンが血小板や赤血球と合わさって形成されるのがかさぶたです。
ただし、かさぶたが形成されるときにばい菌などが混入していると、治りが悪くなってしまいます。このため、かさぶたができる前に、すぐに流水で傷口をしっかりと洗い患部を清潔にしておくことが大事です。
かさぶたの中で傷ついた患部は再生し、傷が治っていきます。そしてかさぶたは、カバーとしての役割が終われば自然に剥がれ落ちていくものです。なので、治りかけの状態で無理にはがすのはやめましょう。かさぶたの下の表皮が再生している状態であれば、剥がしても大きな影響はありませんが、治りかけの状態ではがすと、また出血してしまったり、ばい菌が入り込んで化膿したり、悪化したりして傷跡が残ることもあるからです。
とはいえ、かゆみも伴うこともあり、小さなお子さんはついつい触ってしまいがちです。絆創膏で覆ったり、長ズボンを履かせたりして患部を見えにくくして、触ってしまうのを防いでください。また、近年ではかさぶたをそもそも作らずに傷跡を修復する絆創膏も登場しています。
通常であれば患部にふたをする形で発生し、傷が治ったら自然にはがれおちるはずのかさぶたですが、もしも広がったり治りにくかったりする場合には皮膚疾患が考えられます。細菌が他の傷跡やあせも・虫刺されなどトラブルを起こしている部分に飛び火するように広がっているのかもしれません。また、若いうちはあっという間に治っていたはずの傷も、年齢を重ねる中で体の機能が低下し治りにくくなっていることもあります。ビタミンや亜鉛・マンガンといった栄養の不足から皮膚の再生がなかなか行われなかったり、糖尿病や肝臓病といった病気が原因となったりすることもあります。いずれにしても、治りの遅いかさぶたは病気のサインの場合もあるため、皮膚科を受診するようにしてください。
患部からの出血を止め、新たな細菌感染を防ぐという重要な役割を担うかさぶた。途中で剥がすとたくさんのデメリットが生じるので、絆創膏を貼ったりなど工夫して、剥がさないよう我慢することが大切です。