マレットフィンガーの後遺症は何が原因で起きるの?

2017/12/5 記事改定日: 2019/10/4
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

突き指をした際に発症することのある病変のひとつに、「マレット指(マレットフィンガー)」があります。
この記事ではこのマレットフィンガーの後遺症の原因や治療法やリハビリ、応急処置などについて解説していきます。

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マレットフィンガーと突き指はどう違うの?

指の第一関節だけが木槌のように曲がってしまっている状態がマレットフィンガーです。マレットとは英語で木槌のことを意味しており、そのような状態に指が変形してしまうことからこの名称が付けられています。

マレットフィンガーは突き指の一種で、ボールなどが指先に当った際などに出てくることが多いです。

マレットフィンガーになると指の第一関節が曲がったような状態となり、痛みや腫れが出てくることもあります。そして指を伸ばそうとしても伸ばせなくなってしまうことが、マレットフィンガーの特徴のひとつです。

ただし他動、つまり他人に伸ばしてもらうことはでき、その場合には曲がった部分はしっかりと伸びます。
症状が進行し変形がひどくなると、第一関節だけでなく第二関節までもこのような状態に陥ることもあります。

マレットフィンガーの種類

マレットフィンガーには、「腱性マレット変形」と「骨性マレット変形」の2種類があります。

腱性マレット変形
指を伸ばすための伸筋腱が切れてしまうマレットフィンガー
骨性マレット変形
第一関節内の伸筋腱がついている骨が骨折することで、骨や関節がずれてしまったことで起きるマレットフィンガー

マレットフィンガーで後遺症が残ることはあるの?

マレットフィンガーは適切な治療を受けずに放置すると思わぬ後遺症を残すことがあります。

マレットフィンガーでは腱の断裂や骨折などが生じます。
腱は骨に付着して筋肉の運動を伝えることで関節運動を可能にしますが、断裂した状態では力が関節に伝わらなくなるので、自分の力で第一関節を動かすことができなくなります。
また、第一関節が曲がったままになるといった「変形」を生じることもあります。

骨折を併発している場合には、放置すると関節部位が変形して関節の可動域が著しく低下することがあり、骨片(骨のかけら)が関節内にある状態が続くと炎症を起こして腫れや痛みなどを伴います。

マレットフィンガーを放置するとこれらの症状が残ることで、指先を使った細かい作業がしづらくなるなど日常生活に支障を来たすこともあるので注意が必要です。

マレットフィンガーで応急処置は必要?

マレットフィンガーは自己判断で無理に整復したりすると、ダメージを受けた腱にさらなるダメージが加わり、変形などの後遺症をのこすことがあります。
また、発症したまま放置することでもダメージを受けて切れたりした腱が硬くなって手術をしても元の状態に戻らなくなってしまうこともあります。

マレットフィンガーに気がついたときは、患部をなるべく動かさないよう安静にしてできるだけ早く病院を受診するようにしましょう。痛みが強い場合は氷などで冷やしてもかまいませんが、関節が過度に曲がったりしないよう注意してください。

マレットフィンガーはどうやって治療するの?

マレットフィンガーの治療法は、病態の進行具合や、腱性マレット変形か骨性マレット変形かなどにより異なります。

腱性マレット変形の治療
  • 腱性マレット変形の場合、装具を患部に装着して固定する治療法が一般的
  • この場合、6~8週間を目安とし安定を図る
骨性マレット変形
  • 骨折が起きて骨がずれてしまっているので、外側からの固定だけでは効果を見込めないことが多い
  • 手術で銅線を挿入して指の内側から患部を固定し、安定させる治療法がとられることもある

ただし伸筋腱はくっつきにくいという特徴を持っているため、腱性であれ骨性であれ、手術をしたとしてもすぐにマレットフィンガーが解消されるということはなく、トータル的に見れば固定する方法と治療効果に変わりはないともいわれています。

いずれの治療法を選択した場合でも、それで終わりというわけではなく、その後のリハビリがとても重要です。

マレットフィンガーの治療後のリハビリはどうやって進めていくの?

マレットフィンガーの治療には保存療法と手術療法があり、それぞれ長い固定期間が必要になります。そのため、治療中から適切なリハビリを行って関節の可動域や筋力が低下しないようにしましょう。

保存的治療

保存的治療では、受傷した指にシーネ(添木)を当てて固定を行います。固定は関節を伸ばすように行いますが、受傷した指全体を包帯などできつく固定します。固定期間は6週間が目安ですが、その間は固定された指を動かすことができません。
ただし、そのまま他の指や手首、腕なども安静にした状態にすると筋力の低下につながりますので、無理のない範囲でストレッチや関節運動を行います。

固定が解除された後は関節が硬くなっている状態のため、柔らかいものを握ったり指をゆっくり曲げ伸ばしして関節の可動域を広げる訓練を2~4週間ほど行います

関節運動が十分に行えるようになったら、次は筋力を強化するためのトレーニングを4週間ほど行います。

手術療法

手術療法は、腱の断裂と共に腱の付着部の骨が引きはがされるように剥離する「剥離骨折」が生じた場合に行われます。
一般的には鋼線を挿入して剥離して生じた骨片(骨のかけら)を固定する外固定が行われます。

保存的治療よりも治療期間が長くなる傾向にあるため、リハビリも長期にわたることが多いです。

おわりに:マレットフィンガーは治療やリハビリを怠ると後遺症が残ることがある。必ず最後まで続けよう

マレットフィンガーには2つのタイプがあり、それぞれで治療方針が異なります。ただ、どの種類であっても、その治療法であっても、治療は最後まで続けることが重要であり、治療後のリハビリはさらに大切になってきます。
後遺症を残さないためにも、指の第一関節の変形など、該当する症状がみられたら、まずは整形外科を受診しましょう。

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