靭帯だけじゃない?! 靭帯損傷への正しい対処法を解説

2017/12/5

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

スポーツ選手の怪我を報じるニュースなどで、「靭帯損傷」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、この靭帯損傷とはどんな怪我なのでしょうか?適切な応急処置の方法と併せてご紹介します。

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靭帯損傷って、どんなケガなの?

靭帯とは、骨と骨とを繋いで離れないようにしているすじ状の結合組織で、肩や肘、膝等の関節を形成しています。薄く硬い丈夫なゴムのような物で、筋肉のように自由に伸び縮みする伸縮性はありません。肘や膝を安定させるだけでなく、可動域を制御する働きもあります。

体の靭帯は、日常生活のあらゆる動作に関わる重要な働きを司っていますが、スポーツ中や交通事故等で靭帯損傷が起きることがあります。この靭帯損傷は、外的な力によって通常とは異なる方向に動くことを強いられた時、靭帯が傷ついたり伸びてしまったりすることで起きるものです。軽症の場合は痛みや腫れも軽いですが、重症の場合は強い痛みを伴い、患部を全く動かせない場合もあります。

ダメージを受けているのは靭帯だけじゃない?!

靭帯を損傷することで、靭帯周辺の筋肉や腱も損傷することがあります。外力によって靭帯が異なる方向に動くとき、周辺の筋肉や腱も同様にいつもとは違う動きを強いられる為、傷つくことがあるのです。肩の脱臼を例にすると、関節が脱臼することにより、それに付随する靭帯も損傷します。このとき肩周辺の三角筋や上腕二頭筋、上腕三頭筋や肩甲骨周りの小さな筋肉も、正常な動きと異なる方向に動かされて可動域を超えてしまい、筋肉や腱にダメージを与えてしまうことになるのです。重症の場合は筋肉や腱が断裂してしまったりもします。

このように靭帯損傷は靭帯だけが損傷するのではなく、その他の周辺の筋肉、腱にも被害を与えます。靭帯損傷をした場合は早めに病院を受診し、適切な治療を施してもらう必要があります。

応急処置「RICE療法」について

 

靭帯損傷した後に直ぐに病院に行けない場合、病院に行くまでの間自分で応急処置をすることが、治りを早くするために大切です。その応急処置として、RICE療法があります。RICE療法は怪我をした直後の24~72時間の初期段階に行う対処法のことです。

RICE療法は安静にすることから始まります。怪我をした時は直ぐに運動を中止し、怪我をした患部を動かさないようにします。次に内出血による腫れを抑える為、患部を冷却します。これで痛みは軽減しますが、痺れや痙攣が出たら中止してください。また、凍傷を避ける為に氷をビニールで包み薄いタオルを被せて患部に30分程冷やします。何度か繰り返すとより効果的です。冷やした後は包帯で患部を圧迫固定します。この時きつく巻き付けてはいけません。次は高挙(心臓の位置より患部を上にすること)をします。内出血した血液が患部に集中するのを防ぎ、腫れを最小限に抑えることができます。

損傷した靭帯周辺の筋肉を温めることが重要

靭帯損傷の初期段階では必ず氷等で冷却する必要がありますが、日が経過するにつれて患部を温める必要があります。これは患部を温めることによって、血行を良くして内出血を治すことができるからです。また、靭帯周辺の筋肉の損傷も、温めて血行を良くすることで筋肉がほぐれ、治りが早くなります。

病院や整骨院では温感マットを患部に当てますが、自宅でも代用品で応用することができます。具体的にはカイロや温めのお風呂、湯たんぽ等です。しかし、熱すぎる場合は内出血が悪化してしまう恐れがあるので、自分が気持ちいいと思える温度に調整することが重要です。また完治後は筋力が低下しているので、筋トレを行い、同じ所を怪我しないように努めましょう。

おわりに:靭帯損傷が起きたら、速やかにRICE療法を

人とぶつかったりすることの多いスポーツ中は、特に発症リスクの高い靭帯損傷。靭帯損傷を起こすと、同時に靭帯周辺の筋肉や腱にも影響を及ぼすこともあります。病院に行く前にご紹介した応急処置「RICE療法」を速やかに行い、症状を最小限に留めましょう。

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