記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
多血症には、絶対的多血症と相対的多血症があり、絶対的多血症はさらに真性多血症と二次性多血症に分けられます。この記事では、多血症の種類別の特徴と治療法の概要についてまとめています。
相対的多血症とは、下痢や嘔吐、多量の発汗、火傷による脱水、水分摂取量不足などで血漿量が減少することにより、相対的に赤血球が多くなる状態のことです。赤血球の相対的増加が著しい場合、頭痛や赤面、耳鳴り、めまいなどが起こることがあります。
相対的多血症では、白血球、血小板など、他の種類の多血症では変化しがちな赤血球量以外の検査値が正常であるケースが多いのが特徴です。
絶対的多血症は、赤血球自体が増殖する状態であり、赤血球が異常に生産される原因がわからないものを「真性多血症」、他の病気や状況に起因するものを「二次性多血症」と分類しています。
絶対的多血症に共通する症状は、頭痛や赤面、耳鳴り、めまいなどです。「真性多血症」の場合は、さらに高血圧、皮膚のかゆみ、一過性脳虚血発作、鼻血、内出血など出血傾向が代表的な症状として加えられます。また高血圧が高じ、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞など血栓ができると生じる病気のリスクが上がるのが特徴です。そのほか合併症として、胃潰瘍、痛風、腎臓結石が見られることがあります。
「真性多血症」は「二次性多血症」と異なり、白血球と血小板も増加し、膵臓が腫れることが多いのが特徴です。本来は骨髄で作られるべき血球を、肝臓や脾臓がつくり、白血化(血液腫瘍を発症すること)や骨髄線維症などを起こすこともあります。
真性多血症の発症には、JAK2という酵素の遺伝子の異常が関係していることが確認されていますが、はっきりした原因はわかっていません。
通常、まず増殖の命令を伝える物質が受容体に結合し、その結果、JAK2が活性化されて赤血球などの血液細胞が増殖します。しかし真性多血症では、JAK2の遺伝子に異常が起きているため、恒常的に造血シグナルが伝達され、赤血球などの血液細胞が過剰に増殖し、その結果、血液が濃くなります。
二次性多血症は、何らかの原因で、造血因子であるエリスロポエチンの量が増えるために赤血球量の増加が起こります。原因としては、酸素欠乏やエリスロポエチン産生腫瘍(腎臓癌や肝臓癌で見られることが多い)などがあります。
相対的赤血球増加症の場合は、水分の経口摂取や点滴で、血漿を減少させる要因を取り除き症状改善を導くことが可能です。
真性多血症であれば瀉血(しゃけつ=血液を抜いて赤血球濃度を薄める)が行われたり、ブスルファンやヒドロキシカルバミドなどの抗がん剤が使用されます。その他、分子標的薬が用いられることもあります。
二次性多血症であれば、エリスロポエチン分泌の要因を取り除きます。すなわち赤血球増加の原因を探り、その原因を解消することが基本となります。
真性多血症の予防および完治は現時点では難しいとされています。また、相対的多血症は脱水防止で改善が可能ですが、二次的多血症は原因となる病気を改善するために禁煙、血圧や糖尿病の管理、腫瘍の検査などが必要になります。定期的な検査の受診をこころがけ、不安な症状があるときは念のため病院で検査してもらいましょう。