記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
近年では健康診断により早期発見する人も増えてきていますが、死亡者の多い癌ともいわれる「肺癌」。この肺癌は、どういうルートで転移していくのでしょうか?また、どんな臓器に転移しやすいのでしょうか?
肺は左右両方の胸にあり、空気中の酸素を体内に取り込み二酸化炭素を排出するという役割を持っています。その肺になんらかの原因で異常増殖してしまう癌細胞ができるのが肺癌です。肺癌は初期の段階ではほとんど症状がなく、病状が進み症状が出てきても咳や血痰、発熱などのため他の病気との鑑別ができず、発見が遅くなることがあります。
肺癌はタバコとの関連が非常に高い病気で、喫煙をしていると男性でおよそ4.4倍、女性でおよそ2.8倍発症リスクが上昇するといわれています。ここでいう喫煙には、タバコを吸っている喫煙者本人だけでなく、周囲でタバコを吸っている人の煙を吸ってしまう受動喫煙も入ります。
肺癌は、他の臓器にできた癌に比べて転移を起こしやすいという特徴があります。肺は血液中の酸素と二酸化炭素を入れ替える働きを行うため、全身の血液が肺を巡っているので、肺に入った血液の中に癌細胞が入り込んでしまうと、そのまま肺を出た後に全身へと癌細胞が運ばれてしまうのです。血液がここまで集中する臓器でなければ、癌細胞が大きくなって他の臓器に浸潤していくまで癌の転移が起こりにくいですが、そういった臓器に比べると肺は血液が巡っている臓器のため、癌が転移しやすくなってしまいます。また肺の周りには重要な臓器がたくさんあるため、癌細胞が大きくなって直接的に肺の隣の臓器に転移をしてしまうということも考えられます。
肺癌は転移しやすい種類の癌ですが、特に転移しやすいのは脳と骨、肝臓、副腎です。
まず脳への転移があった場合には、脳の機能が正常に働かなくなることで手足を動かしにくくなったり、ろれつが回らなくなったりします。その他にも頭痛や吐き気、麻痺などを起こすことがあります。人格の変化や物忘れが激しくなるという症状もあります。
骨に転移した場合には転移をした部位の痛みがでることと、その部位の骨が弱くなってしまうのでふとしたことで骨折をしやすくなります。
肝臓に転移をした時には初期はほとんど症状がありませんが、徐々に黄疸や倦怠感、腹水といった症状が出てきます。
副腎に転移をした場合には、腹部や背部の痛みがでたり、出血による貧血症状が出ることがあります。
肺癌は転移を起こしやすい種類の癌ですが、転移を起こすルートは主に2つあります。
1つは血液です。肺は全身を巡っている血液が全て通る臓器のため、癌細胞が肺にできた時には肺に巡ってきた血液に癌細胞が入り込み、肺から全身に癌細胞が血流にのって運ばれていきます。そのため、血液にのって肺から遠い位置にある臓器にまで癌が転移しやすくなります。
2つめが、リンパ液による転移です。肺はリンパ節も多い臓器なので、リンパ液に入り込んだ癌細胞がリンパ液と共に全身に広がることで転移が起こります。
肺は全身の血液が集まる臓器だからこそ、他の臓器にその血液が流れた際に、癌が転移してしまうことがあります。放置していると脳や骨、肝臓などさまざまなところに転移するリスクがあるので、血痰などの異変がみられた場合、すぐに検査を受けるようにしてください。