記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/18 記事改定日: 2019/6/10
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
副甲状腺の機能が低下することを副甲状腺機能低下症、亢進することを副甲状腺機能亢進症といいますが、これらはどのような違いがあるのでしょうか。副甲状腺機能低下症、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能低下症の3つを比較しながら解説していきます。
副甲状腺は甲状腺の裏側に4つに分かれて存在する非常に小さな臓器です。しかし、小さいながらも副甲状腺は身体の状態を正常に保つための非常に重要は働きを担っています。
副甲状腺の最も大切な働きは、血中のカルシウム濃度を高める作用を持つ「副甲状腺ホルモン」の分泌を行うことです。
私たちの身体には約1kgのカルシウムが存在しますが、そのほとんどは骨の中に存在しています。副甲状腺ホルモンは骨に蓄えられたカルシウムを血液中に溶解させることで血中のカルシウム濃度を上昇させます。一方、血中のカルシウム濃度が上昇すると副甲状腺ホルモンの分泌が抑制されることでカルシウムの溶解が低下し、カルシウム濃度を調整しています。
血中のカルシウムはイオン化した状態で存在し、筋肉の収縮や脳をはじめとした神経の情報伝達に必要な物質です。
このため、血中のカルシウム濃度が過度に上昇しても低下しても筋肉や神経の働きが乱れ、様々な症状が引き起こされるのです。
副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモンの分泌が低下してしまうことで血中のカルシウム濃度が低下し、リン濃度が上昇してしまう病気です。
カルシウムというと骨というイメージする人もいるかもしれませんが、カルシウムは骨だけでなく体内のさまざまな器官に関わっています。例えば、筋肉の収縮や血液の凝固、脳細胞が働くうえでも必要になり、神経系とのつながりも深いです。つまり、副甲状腺機能低下症になると、骨、筋肉、血液凝固、脳細胞といったところに影響し、筋肉の痙攣やしびれといった症状が現れます。
代表的な症状として挙げられるのがテタニー発作です。これは手指が痙攣を起こし、手首が下に曲がったような状態になったり、手指だけでなく口唇にまでしびれ感があったりするものを指します。ひどいときには、意識消失や白内障がみられる場合もあります。
治療は活性型ビタミンD3製剤の服用が中心であり、この薬の服用で大半の人は血中の血液中のカルシウム濃度のバランスは改善するとされ、カルシウム濃度が正常になると症状も回復していきます。
副甲状腺機能低下症とは反対に、副甲状腺の機能が亢進(過剰に働くこと)することで症状が現れる病気を副甲状腺機能亢進症といいます。副甲状腺機能亢進症には2種類あり、そのうちのひとつ原発性副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺そのものに異常が起こることで副甲状腺ホルモンの分泌量が増加します。
主な症状として
などが起こります。これらの症状はカルシウム濃度が低下するために見られるものです。そのため、活性型ビタミンD3製剤の服薬でカルシウム濃度をある程度コントロールすることが必要です。活性型ビタミンD3は、ビタミンDから作られるホルモンの一種であり、副甲状腺ホルモンとともにカルシウム濃度の維持に関わっています。また、乳酸カルシウムなどのカルシウム製剤を用いる場合があります。
これらの投薬にあわせて、カルシウム濃度が一定に保たてれているかどうかをチェックするための血液検査も、定期的に行う必要があります。
二次性副甲状腺機能低下症とは、副甲状腺そのものではなく、何か他に原因があって甲状腺機能が亢進してしまうものです。例えば、甲状腺腫などで甲状腺の手術あるいはそれ以外の病気で頸部を手術している場合、外傷により頸部にダメージを受けている場合、先天性の副甲状腺形成異常などが挙げられます。
原発性副甲状腺機能亢進症と同じように骨がもろくなり、体の様々な組織にカルシウムが沈着する異所性石灰化が起こることもあります。また、動脈硬化や心臓弁膜症、関節炎などが現れることもあります。
治療も原発性副甲状腺機能亢進症と同様に活性型ビタミンD3製剤や乳酸カルシウムなどの投薬が中心です。
ただし、進行し副甲状腺が腫大してしまった場合は、手術で摘出することもあります。
副甲状腺は機能が亢進しても低下しても、望ましくない症状が現れます。どちらも重篤な症状に発展する可能性があるため、早期に治療を受けることが重要です。気になる症状がある場合は、必ず病院に相談し、専門医を紹介してもらいましょう。