記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/14 記事改定日: 2018/6/29
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
一般的な年齢よりも早く二次性徴が始まってしまう「思春期早発症」。この思春期早発症に対しては、どういった治療が行われるのでしょうか?原因と併せて解説していきます。
人が大きく成長をする時期の1つとして、思春期があげられます。思春期は性ホルモンの分泌によって大きな成長が見られます。しかし、通常よりも早い時期に性ホルモンが分泌されることによって、平均とは異なる早さで成長の時期を迎えてしまう病気があります。これが思春期早発症です。
思春期早発症になると、男性の場合には9歳までに精巣が発達したり、11歳までに脇毛やひげが生えたり、声変わりをしたりという変化が見られます。女性の場合には7歳6ヶ月で乳房が膨らみ始めたり、8歳までにわき毛や陰毛が生えてきたりします。このように成長が早く進むと、周りとは違うという心理的ストレスを抱えるようになったり、身長の伸びが早期に止まってしまったりする恐れがあります。
思春期早発症は、原因によって「中枢性(真性)思春期早発症」と「末梢性思春期早発症」の2種類に大別されます。
まず「中枢性(真性)思春期早発症」は、脳の視床下部から分泌されるゴナドトロピン放出ホルモンが早期に活動を始めることによって、ゴナドトロピンの分泌が刺激されることが原因で、性腺からの性ホルモンの分泌が早期に起こるようになります。この中枢性思春期早発症は、明らかな原因が認められない「特発性中枢性思春期早発症」と、脳の病気が原因となっている「器質性中枢性思春期早発症」に分けられます。
もう一方の「末梢性思春期早発症」は、副腎や性腺の病気(卵巣腫瘍や精巣腫瘍)が原因で引き起こされるものです。
先天性副腎皮質過形成などのように遺伝性のある副腎や性腺の病気によって末梢性思春期早発症を発症することがあるので、これらについては遺伝性があるといえます。
ただし、中枢性思春期早発症自体には遺伝は見られないとされています。
思春期早発症の治療法は、原因によって異なります。
副腎や性腺の病気が原因となっている末梢性思春期早発症の場合は、外科手術による治療が第一選択となります。切除が不可能という場合には放射線療法が行われることがあります。
脳の病気が原因である器質性中枢性思春期早発症の場合も、腫瘍などの原因疾患の治療を行います。腫瘍の大きさや位置によって、外科手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)などが適宜選択されます。ただ、脳炎の後遺症が原因の場合などは、薬物療法が行われます。
特発性中枢性思春期早発症の場合には薬物療法が中心となります。特発性中枢性思春期早発症の大半の症例では、ホルモン製剤の一種であるリュープリン治療が最も有効とされており、4週間ごとに間隔をあけて皮下注射を行います。これによってゴナドトロピンの分泌を抑え、性ホルモンの合成・分泌を抑制します。
ただし、性ホルモンには骨を強くする働きもあるため、この分泌を抑制するということは骨の強さにも影響を与える可能性があるので、治療が長期にわたる場合には骨密度の検査も行う必要があります。
リュープリン療法の大きな副作用は少ないとされていますが、薬剤を注射した部位の痛みや赤み、腫れを生じることがあります。多くは数日で自然と治りますが、その部位に細菌感染などが生じると、膿のかたまりができたり、皮膚の一部がむけることもあります。
また、長期にわたって使用する場合では骨密度の低下によって、軽度な外傷で骨折を生じやすくなったり、性腺機能が十分に作用しないことで腟の乾燥や痛みを生じることも少なくありません。さらに、まれにではありますが重大な副作用として下垂体卒中を生じることもあり、頭痛や視力・視野障害などを生じる場合には早急な治療が必要になります。
しかし、治療後の妊娠や出産に障害が生じることはないと考えられていますので、ホルモン療法とはいっても将来への心配をする必要はないでしょう。
思春期早発症には、「中枢性(真性)思春期早発症」や「末梢性思春期早発症」などさまざまな種類があり、それぞれで適切な治療法が異なります。そのため、治療にあたっては、まず発症の原因を正確に把握することが重要です。
医師から十分に事前説明をしてもらい、納得したうえで治療を受けさせましょう。