記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/18
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「原発性アルドステロン症」という病気をご存知でしょうか。高血圧症の一種ですが、病名さえ聞いたことがないという方がほとんどかと思います。今回はこの原発性アルドステロン症について、概要や検査方法などをお伝えしていきます。
原発性アルドステロン症とは、副腎皮質に血圧を上げるホルモンの一つであるアルドステロンを多く分泌する腺腫ができるか、分泌細胞がたくさん作られることによって起こる高血圧症のことを言います。
アルドステロンは高血圧の原因となる物質である塩化ナトリウムを体の中に貯めこみ、カリウムを外に出す働きをしています。しかし原発性アルドステロン症では、このアンドロステロンが過剰に出過ぎてしまうことで体のなかにナトリウムと水分を蓄えてしまうことから、血圧の上昇や血液中のカリウムの低下によって各症状(多尿、筋力低下、不整脈など)をきたすようになります。原発性アルドステロン症を発症すると比較的若年で高血圧を発症する危険性があり、脳出血などの重い合併症を起こすことも少なくありません。
原発性アルドステロン症によって引き起こされる可能性のある合併症には、脳血管障害、心筋梗塞などの虚血性心疾患、大動脈瘤、心不全、腎不全などの重篤な病気が挙げられます。高血圧になると、血管、心臓、脳、腎臓などの臓器障害を引き起こす可能性を高めてしまうのです。
また、原発性アルドステロン症によって過剰分泌されたアルドステロンが動脈硬化の原因となるため、上で挙げたような病気を合併症として引き起こす可能性が高まります。原発性アルドステロン症は早期に治療すればするほど、これらの病気を予防する効果も高まるため、できるだけ早期に治療を開始することが重要です。
原発性アルドステロン症の診断では、まず血液検査を行います。血液検査によって血液中のアルドステロン濃度が高くないか、または別のホルモン濃度(レニン活性)とアンドロステロン濃度との比をとることで相対的にアンドロステロン濃度が高くないかを調べます。
その後、原発性アルドステロン症の疑いがある場合、利尿剤などによる薬剤負荷、2時間の立位による負荷などの負荷試験によって確定診断を行います。負荷試験では、内服や注射によって薬剤を投与した際のホルモンの反応をみます。同時に腹部のCTやMRIなどの画像検査を行いますが、副腎の病変が写らないことも多く、また、左右両方の副腎に病変が存在する場合もあります。
そのため、原発性アルドステロン症と確定診断がなされた場合には、病変部位を確認することを目的として左右の副腎静脈にカテーテルを挿入し、血液を採取しアルドステロン濃度を測定する副腎静脈サンプリング検査を行います。
原発性アルドステロン症の治療では、検査の結果片側の副腎にだけに病変が認められる場合、病変側の副腎を摘出する手術を行うのが一般的です。腹腔鏡下副腎摘出術が行われます。この手術では、腹部に4箇所だけ小さな穴を開けて腹腔鏡(棒状のカメラ)と手術器具を入れ、モニター画面を見ながら病変の摘出を行います。
なお、両方の副腎からアルドステロンが過剰に分泌されている場合には薬物療法が行われることが一般的です。両方の副腎を摘出することはできないためアンドロステロンに拮抗する作用を有する薬物を服用します。ただし、副腎の片側だけに原発性アンドロステロン症が認められる場合でも、手術不能な場合や患者さんが手術を希望しない場合には薬物療法を行うこともあります。
原発性アルドステロン症は、心筋梗塞や脳血管障害などの重篤な合併症を引き起こすリスクの高い病気です。高血圧に多尿、筋力低下、不整脈などの症状がある方は、早めに検査を受けることをおすすめします。