クラインフェルター症候群の症状と暮らしなかでの注意点とは?

2017/12/14 記事改定日: 2020/3/26
記事改定回数:2回

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

クラインフェルター症候群は、性染色体の異常で起こる病気です。症状には個人差がありますが、いったいどのような症状が起こるのでしょうか。
この記事では、クラインフェルター症候群の症状、治療、日常生活での注意点などを紹介していきます。

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クラインフェルター症候群とは?

性染色体にはX染色体とY染色体の2種類があり、XとYの組み合わせによって性別が決定されます。
クラインフェルター症候群は男性の性染色体にX染色体が通常より一つ以上多くなること(XXYやXXXYなど)で生じる疾患の総称で、男性だけにみられる疾患です。

性染色体異常がなぜ起こるのかは完全にはわかっていません。クラインフェルター症候群は、精巣の発育不全や無精子症など性腺機能の低下が症状としてあらわれるほか、細長い四肢などが身体的特徴としてあらわれます。

クラインフェルター症候群の症状と合併症は?

クラインフェルター症候群の代表的な症状として挙げられるのは

  • 小児期からの学習障害
  • 四肢細長
  • 精巣萎縮

などであり、女性化乳房や顔毛の発育不良があらわれる場合もあります。

症状には個人差が大きく、これらの症状が全てあらわれるとは限りませんが、性的機能の発育が盛んな思春期頃に上記の症状が現れやすいことが特徴です。
そのため、このような症状や特徴に気づきクラインフェルター症候群かもしれないと病院に相談し、染色体の検査をして初めて発見されることも少なくありません。

また、身長が高く手足が長いという身体的特徴を持っていることが多く、言語障害のために感情表現が苦手になり、感情のコントロールがうまくできなくなってしまうこともあります。

その他、染色体異常により、悪性腫瘍や骨粗鬆症、自己免疫疾患、糖尿病、軽度の知的障害などの合併症が引き起こされる可能性もあります。

クラインフェルター症候群はどうやって治療するの?

クラインフェルター症候群を原因とする言語障害には言語療法による治療も行われますが、代表的な治療法として挙げられるのはホルモン治療です。不足している男性ホルモンを補充するため、男性ホルモン剤(テストステロン)を注射します。

クラインフェルター症候群の症状があらわれはじめる思春期に男性ホルモンによる治療を開始することができた場合、正常な二次性徴の発達など良好な効果を期待することができるといわれています。
また、男性ホルモン剤の作用で男性化が促進され、骨密度を上昇させることもできるとされています。

ただし、男性ホルモン剤の注射は染色体の異常そのものを根治することができません。あくまでも対症療法であることは理解しておきましょう。

クラインフェルター症候群の不妊治療

クラインフェルター症候群では精巣の萎縮や無精子症など、男性不妊を引き起こす症状が現れます。このため、自然妊娠が困難であることが大半であり、不妊をきっかけにクラインフェルター症候群が発見されることもあります。

しかし、クラインフェルター症候群に対する不妊治療は非常に難しいことが多く、完全な無精子症の場合は治療を行っても妊娠に至る可能性はありません。ただ、精巣内にわずかな精子が発見できた場合には、その精子を用いて体外受精や顕微授精が可能な場合もあります

近年では、クラインフェルター症候群患者の半数近くは精巣内に微量な精子が存在することがわかっています。このため、顕微鏡下精巣精子回収術を行って精子の回収を試みる治療が行われるようになっています。

クラインフェルター症候群の人が日常生活で気をつけることは?

クラインフェルター症候群は目立った症状が現れにくく、不妊治療などの際に偶然発見されることも少なくありません。そのため、病気であることに気づかないまま日常生活を送っている人も多いと考えられています。

クラインフェルター症候群の人は心臓の病気などにかかりやすいため、身体に過度な負担のかかる運動はできるだけ避けたり、体調を崩さないよう普段から感染対策や生活リズムを整えたりすることが望ましいとされています。

また、学童期から知能の発達の遅れや性格の異常が見られることもあるため、診断が確定した場合はそれぞれに合った療育を進めることが大切です。学校や職場などには病気のことをしっかり説明し、周囲の理解を求めるようにしましょう。

おわりに:クラインフェルター症候群は精巣萎縮などがみられる疾患。治療については医師と相談しながら決めよう

クラインフェルター症候群は、性染色体の異常で発症する疾患です。女性化乳房や精巣萎縮などの症状が現れ、骨密度の低下や言語障害などの合併症がみられることもあります。

治療は男性ホルモン剤の注射が中心になりますが、あくまでも対症療法であり、根治することはできません。また、精巣の発達が未熟になるので精子の数が少なく、妊娠を希望する場合は不妊治療が必要になります。
子供時代も大人になってからも、医師と相談しながら納得のいくかたちで治療を進めていきましょう。

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