記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
日本の糖尿病患者のおよそ9割は2型糖尿病だといわれるほど発症率の高い2型糖尿病ですが、その原因には生活習慣だけでなく遺伝的要因が関係していることが明らかになってきました。
今回は、2型糖尿病と遺伝の関係というテーマを中心にお伝えします。
2型糖尿病は「インスリン抵抗性」の高まりによって、体内のインスリンが作用しにくくなった状態を指します。以前は中高年の人に発症することが多い病気でしたが、食生活をはじめとするライフスタイルの欧米化に伴い、現在では若い人や子どもの発症も増えています。
発症初期には目だった症状が出ないことも多いですが、進行するにつれて以下のような症状があらわれます。
◆尿中に糖が出る
◆大量の尿が頻繁に出る
◆頻繁にのどが渇く
◆体重が減る(カロリーの多くが尿で失われるため)、強い空腹感を感じる
◆疲労感
◆眼のかすみ
◆眠気、吐き気
◆持久力、体力の低下
糖尿病になる要因には「遺伝的要因」と「環境的要因」があります。
遺伝的要因は両親や親戚に糖尿病の人がいると、そうでない人よりも糖尿病を発症する可能性が高いタイプであるということです。一方、環境的要因は主に〈食べすぎ、運動不足、ストレス〉などの生活習慣のことを指します。2型糖尿病の場合は生活習慣が重要な要素であることから「生活習慣病」と呼ばれていますが、発症には遺伝的要因も関係していることもわかってきたのです。
2型糖尿病になりやすい体質を受け継いでも、生活習慣などによる体への負担をできるだ防いでいくことで発病の確率を低く抑えられる可能性があります。
上の項目で説明したように、2型糖尿病の発症には遺伝的な要因も関わっていますが、生活習慣の乱れという要因もあるので、生活習慣を改善することで2型糖尿病になりにくい体をつくることができます。
環境的要因の主な内容は〈ストレス、肥満、運動不足〉といわれているので、下記のような方法でこの3つをできるだけ減らすことがポイントです。
ストレスによってアドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾールなどのホルモンが分泌されると、インスリンの働きが弱まって血糖値が高い状態が続いてしまいます。ストレスをためてしまうと2型糖尿病の発症リスクが高くなるのです。
1日に必要なカロリーの量を医師に確認してください。
また、どんな食品をどのくらい食べるとよいか・あるいは避けるべきかも聞くと食事の際に摂取したカロリーを測りやすくなります。
2型糖尿病患者に多い肥満を防ぐためにも運動する習慣をつけることが大切です。
また、運動することでインスリンが効きやすくなるというメリットもあります。
運動は体全体の筋肉を使う〈ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳〉などの有酸素運動を1回に20~40分ほど・週3回以上のペースで行うのが効果的といわれていますが、薬物療法を行っている場合はできるだけ食後に運動をするようにしましょう。
(※薬物療法を行っていない場合にも運動をしても良いかどうかは自己判断せずに、医師に確認してから始めるようにしてください)
2型糖尿病の治療では基本的に食事療法と運動療法を行われますが、改善がみられない場合は薬物療法を追加して行うことが多いです。
2型糖尿病の治療薬には経口薬と注射薬の2種類があります。
糖尿病の経口薬は、血糖値を下げる仕組みの違う3つのタイプがあります。
分泌機能の低下した膵臓を刺激してインスリンの分泌を促す「インスリン分泌促進薬」、インスリンに対する反応を良くして、インスリンの効果を発揮しやすくする「インスリン抵抗性改善薬」、糖が体で消化・吸収されるスピードを遅らせたり、尿から排出される糖の量を増やして血糖を低下させる作用がある「糖吸収・排泄調整系薬剤」が代表的です。
また、飲み薬だけでは血糖コントロールが十分に出来ない場合には、インスリンを直接体内に注入するインスリン治療が開始されます。
2型糖尿病でも膵臓からのインスリン分泌は非常に少ない場合や、長期間血糖値が高い状態で治療をしていなかった場合、さらには糖尿病を発症している期間が長い場合などにはインスリン療法が必要になります。ただし、2型糖尿病の状態には個人差があり、糖尿病が悪化したら必ずインスリン療法が必要というわけではありません。
2型糖尿病は遺伝的要因と環境的要因によって引き起こされます。ただし、遺伝的要因があるからといって糖尿病そのものが遺伝するわけではありません。生活習慣を改善して2型糖尿病の発症を防ぎましょう。
また、発症した場合は症状が悪化しないよう、できるだけ早く治療を始めるようにしましょう。