記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/12/14 記事改定日: 2018/4/2
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
「PMS(月経前症候群)」は、イライラや頭痛、腹痛などの辛い症状を引き起こします。今回の記事では、PMSの辛い症状を和らげる効果があると考えられている漢方薬を、効能別に詳しくご紹介していきます。
PMSとは月経(生理)の1~2週間前から起こるさまざまな体の不調のことです。症状には個人差があり、下腹部痛や頭痛、胃の不快感、便秘、眠気、イライラなどの症状が現れます。女性ホルモンのバランスの乱れが原因で起こると考えられており、日頃からストレスを溜めやすい女性ほどPMSの症状も重くなる傾向にあります。
PMSの症状をを改善する治療薬は、ホルモンバランスを整える低用量ピルの使用、落ち込みやイライラなど精神的に不安定な時は抗うつ剤が有効であるといわれています。
一方、このような客観的な症状に直接効果をもたらす治療に対して、自分の体調を全体的に整えることで自覚症状の改善を狙うのが東洋医学である漢方薬の役割です。
漢方では、PMSは血の巡りが悪くなったり、体内に入った水分処理が上手く出来ず水分代謝が悪くなる等が要因で体調不良を起こすと考えられています。そのためPMSに対しては、血の滞りや水の滞りをスムーズに促し、ゆっくりと症状を改善させていく効果が期待できる漢方薬を使用します。
イライラや不眠、肩こりの症状が気になるときに効果的とされているのは、加味逍遙散(かみしょうようさん)です。加味逍遙散は柴胡や芍薬、当帰など女性特有の悩みを改善してくれる10種類の生薬から作られています。具体的には血行を良くして体を温める作用があり、怒りや興奮などの精神不安定な状態を改善する効果があります。それに伴い気持ちも穏やかになるので、不眠などの症状を改善する効果が期待できます。また血の巡りをスムーズにする事で肩こりや冷えなども緩和出来ます。
加味逍遙散は元々冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害などの治療に用いられる漢方薬です。肩こりやめまいなど体の不調に加え、ストレスやイライラなどの精神的な症状の改善を期待できるのが大きな特徴です。
加味逍遥散の主な副作用として報告されているのが発疹、発赤、掻痒感、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの症状です。
また、まれにですが以下のような重大な副作用が出現する可能性も報告されています。( )の症状が出演した場合は重大な副作用の初期症状である可能性があります。
・偽アルドステロン症( 尿量の減少、顔や手足のむくみ、まぶたが重くなる、手がこわばる )
・ミオパチー( 体のだるさとそれに伴い手足に力が入らない、手足の引きつり、手足の痺れ )
・肝機能障害・黄疸( 倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる )
・腸間膜静脈硬化症( 腹痛・下痢・便秘・腹部膨満などを繰り返す )
これらの症状に気づいた場合には、すぐに使用をやめて、すぐに医師の診療を受けるようにしましょう。
PMSによる頭痛や下腹部痛・めまいを和らげたいときに有効と考えられているのが桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)です。桂枝茯苓丸はのぼせの改善を図る桂皮や、筋肉のこわばりを取り鎮痛作用がある芍薬、古い血液のうっ滞を取り除く桃仁、めまいや動悸に効く茯苓、血液の巡りを良くする牡丹皮の5種類の生薬で構成されています。
桂枝茯苓丸は主に、血流が悪い状態である瘀血(おけつ)を改善する効果があるとされます。血流のうっ滞を改善することで頭痛や下腹痛、めまいといった不快な症状を改善していきます。また体を温めて冷えをなくすという効能もあります。それだけでなく余分な水分を排出してくれるため浮腫みを改善する効果が期待出来ます。
桂枝茯苓丸は産婦人科領域でよく使用され、月経不順や更年期障害の際にも使われる事が多いですが、比較的体力がある人に処方される漢方薬です。
桂枝茯苓丸の主な副作用として報告されているのは発赤、発疹、搔痒感、食欲不振、胃の不快感、嘔気、下痢などです。
また、まれに起こるといわれている重大な副作用は以下の通りです。( )の症状が見られた場合には重大な副作用の症状であることが考えられます。
・肝機能障害・黄疸(血液検査にてAST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、γ-GTPといった値の上昇、倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる)
これらの症状が見られた場合にはすぐに使用を中止して医師の診察を受けるようにしましょう。特に体力が弱っている人では副作用が出現しやすいため内服の際には注意が必要です。
のぼせや生理やPMSに伴う便秘、腰痛に効果があると考えられているのは、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)です。大黄や芒硝、桃仁、桂皮、甘草の5種類の生薬からなり、血の巡りが悪くなって滞っている状態を改善していきます。
血液の循環が良くなる事で不安やイライラを鎮めたり、のぼせや冷えの緩和、腰痛を和らげる等の効果が期待出来ます。さらにホルモンバランスを整える効果もあるとされているので、月経不順やPMSに伴い下腹部が張って便秘がちの人にも向いている漢方です。ちなみに便秘になると肌荒れも起こしやすいですが、桃核承気湯を服用する事で便秘を解消し、肌トラブルも改善される事から、ニキビ治療に使われる事もあります。
他にも更年期障害や高血圧に伴ってあらわれる症状を改善させるなど、応用範囲が広い漢方薬ですが、比較的体力があり体格が良い人に向いています。
桃核承気湯の主な副作用として報告されているのが発疹、発赤、掻痒感、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの症状です。
た、まれにですが以下のような重大な副作用が出現する可能性も報告されています。( )の症状が出演した場合は重大な副作用の初期症状である可能性があります。
・偽アルドステロン症(尿量の減少、顔や手足のむくみ、まぶたが重くなる、手がこわばる)
・ミオパチー(体のだるさとそれに伴い手足に力が入らない、手足の引きつり、手足の痺れ)
これらの症状が見られた場合にはすぐに使用を中止して医師の診察を受けるようにしましょう。
もともとPMSに対して低用量ピルで治療をしていたという場合、漢方薬を併用していくことは可能なのでしょうか。
漢方薬は副作用の頻度がお薬と比べて少ないことや、飲み合わせ的にも問題がないため、一般的にピルと併用可能になります。
低用量ピルの補助的な役割を期待してあえて漢方薬を一緒に処方する病院もあるようです。
そのため、低用量ピルと併用して漢方薬を使用したいと考えている場合にはかかりつけの医師に一度相談してみてもよいかもしれません。
漢方薬は身体の崩れたバランスを整え、病気に対する抵抗力を増したり、自覚症状を改善する効果があります。ピルを飲むことに抵抗がある人や、病院で処方された治療薬で効果がなかった人は一度試してみてもよいかもしれません。
ここで紹介した漢方薬はあくまで一例となるため、医師が症状を見てあなたの体に合ったものを処方してくれます。
また、漢方薬にも副作用がないわけではありません。他の薬との飲み合わせもあるので、医師に処方してもらうようにしてください。