記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/12 記事改定日: 2019/4/8
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
髪の毛が丸く抜け落ちてしまう「円形脱毛症」。「円形脱毛症はストレスが原因で起こる」という話をよく聞きますが、果たしてこれは本当なのでしょうか?
毛髪が円形や楕円形の形で脱毛してしまう円形脱毛症は、年齢や性別を問わずに発症する可能性があります。
20代から30代に多いとされていますが、実際には小学生などの低年齢の患者も存在しています。
また、円形脱毛症を発症した場合、頭皮から毛髪が丸い形で抜け落ちるのは一箇所だけではなく、何箇所も出来る場合もありますし、重症化すると身体中の毛が抜け落ちる場合もあるのです。
髪の毛が抜け落ちるときに肉体的な痛みを伴うことはありませんが、精神的苦痛が大きいのが円形脱毛症の特徴です。そして、すぐに新しい毛髪が生えるわけではないので、それだけ美容的な面からも心に負担をかけてしまう疾患です。回復しても再発を繰り返す場合も多いとされ、完全治癒が容易ではない疾患のひとつでもあります。
円形脱毛症の発症原因としては、主に自己免疫応答の可能性が指摘されています。自己免疫応答とは、体内で異物を認識すると排除する働きを持つ免疫系が、正常な組織や細胞に過剰な攻撃を仕掛けてしまう状態です。つまり体を守る免疫に狂いが生じ、問題のない正常な部分を破壊する事で自分自身の体を攻撃してしまうのです。円形脱毛症に関して言えば、毛根組織に対する免疫異常が毛髪の脱毛を引き起こしているという事になります。
本来体を守り健康を維持するための免疫に、このような狂いを生じさせる原因はこれといって断言出来るものではありません。ただ、円形脱毛症は様々な要因が重なる事で発症すると言われており、自己免疫疾患的要素や遺伝的要素に加えてアトピー体質なども関係します。またストレスとの関係性も注目されています。
多くの疾患においてストレスとの関係は切っても切れないものであり、それだけ精神的や肉体的なストレスが関係すると言われています。人はストレスを感じると交感神経と副交感神経に乱れが生じ、結果的に自律神経のバランスを崩します。それによって体内におけるホルモンバランスや血管に影響を及ぼし、新たな疾患を発症させるきっかけになります。
円形脱毛症においてもストレスとの関係性はあるといわれていますが、それは数ある要因の一つでしかありません。なぜなら円形脱毛症は基本的には免疫異常によるものと考えられているため、ストレスが直接的な脱毛の理由になるとは断言出来ないからです。
ただし、ストレスがホルモンや自律神経系統に影響を及ぼす事で、円形脱毛症を発症させる自己免疫応答を引き起こす可能性は大きく、そういった点から、過度なストレスが身体全体や毛根組織にも影響する恐れはあります。
ストレスの状態は免疫機能に大きな影響を与えると考えられています。
ヒトの免疫を担う需要な細胞であるリンパ球は、交感神経が刺激されることで産生されるアドレナリンによって減少することが分かっています。交感神経はストレスがかかることで刺激されるため、ストレスはリンパ球を減少させることにつながるのです。
リンパ球は体内に入り込んだ異物を攻撃する細胞であるため、ストレスがかかる=リンパ球が減少することで免疫力が低下すると考えられています。
ストレスが円形脱毛症の一つのきっかけとなる事から、症状を回復させるには肉体的にも精神的にも負荷のかからない生活を送る必要があります。事実、ストレスが軽減され身体のバランスの乱れが正されると回復の兆しが見える事もあります。
ただし円形脱毛症は再発することが多い疾患でもあるため、医療機関での治療を行う事をおすすめします。医療機関では、ステロイドや免疫賦活薬(めんえきふかつやく)の処方、ビタミンやミネラルの投与や育毛薬のミノキシジル、血行を促進する低出力レーザーなどによる治療が行われます。
円形脱毛症は複数箇所にわたって発生したり、再発したりすることも少なくありません。そのため、放置して長引かせるとストレスが増し、そのストレスによって円形脱毛症がさらに悪化してしまう可能性もあります。ひとりで悩まず、専門の医療機関にて早めに相談することをおすすめします。