記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
手足の筋肉のこわばりや呼吸機能の低下など、さまざまな症状を引き起こす「多発性硬化症」。今回の記事ではこの多発性硬化症のリハビリ法について、症状別に解説していきます。
多発性硬化症では中枢神経のあらゆる部位で脱髄が生じるので、その症状も多岐にわたります。代表的な症状に運動神経障害や感覚神経障害などが挙げられますが、これらによって筋力が低下したり関節が動かしにくくなったりといった状態を引き起こしやすくなり、日常生活の制限をきたすリスクも高くなります。
また多発性硬化症は寛解と増悪を繰り返す、つまり再発しやすい疾患でもあります。したがって可能な限り筋力など身体機能を維持して、疾患の再発や増悪を予防するためにもリハビリテーションを行っていくことが重要となります。
ただ、リハビリテーションを行う上では、温度変化と疲労に注意が必要です。例えば、運動の体温上昇に温度が上昇するような外的要因が加わると、神経伝達速度が鈍くなり疾患の増悪に繋がるリスクがあります。そして過度の運動は神経疲労が生じやすく、疾患増悪リスクであるため注意が必要となります。
多発性硬化症では身体の筋肉がこわばりやすくなり、その柔軟性も低下しやすいです。また、身体のバランス調整や、手足を動かす際のコントロールが上手にできないといった症状が見られることがあります。
これらに対するリハビリテーションの方法ですが、柔軟性維持を目的とした手足のストレッチを行うことが有効です。ストレッチの際は痛みを感じない範囲でゆっくり行うことと、筋肉を伸ばす際には息を吐きながら行うことが重要です。具体的には、箸で物を掴んで移動させる練習や、足でボールを色々な方向へ転がすといった練習方法があります。これらの練習は速く行うよりも落ち着いて行い、その力加減やペースの感覚を感じ取りながら行っていくことが望ましいといえます。
多発性硬化症では、運動神経障害に伴い感覚神経障害が見られることがあります。そして運動神経障害に起因して相対的に筋力低下を引き起こしやすくなることから、手足の筋力維持が重要です。
筋力のリハビリテーションの方法としては、腕を上に挙げたり横に挙げたりすることを反復して行ったり、椅子に座って膝を左右交互に曲げ伸ばしをする、足踏みを繰り返すといった方法があります。この際の注意点としては、痛みがない程度に留めることと、過度の重量物を使うことは避ける必要があります。
一方、手足の感覚機能に対するリハビリテーションとしては、線など目印を決めてその目印に沿って手や足でボールを移動させたり転がしたりといった方法があります。これには、目標到達の正確性や速度のコントロールなどの感覚を訓練する目的があります。
その他にも、多発性硬化症では筋肉の柔軟性や筋力低下から、相対的に呼吸機能にも影響を及ぼすことがあります。また声が出しにくい、呂律が廻りにくいといった症状も見られることがあります。
これらのリハビリテーションですが、息をしっかり吸いながらできるだけ胸を張って腕を上に挙げ、息を吐きながら腕を下ろすといった呼吸体操があります。また声を出す際にはできるだけ、ゆっくりと持続的に発声練習を行うといった方法もあります。これらは肩や胸廻りの筋肉をほぐしながら腹式、胸式呼吸リズムを整えていくことに繋がります。また呼吸リズムが整えばよりしっかりと発声しやすくなることにも繋がっていきます。
いかがでしょうか。多発性硬化症の症状の悪化を最小限に留めるためには、筋力低下を防ぐためのリハビリを根気よく行っていくことが欠かせません。症状に合わせて、ご紹介したリハビリ法をぜひ実践してみてください。