記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/18 記事改定日: 2019/9/4
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高熱とともに皮膚に赤い線のようなものが現れた場合は、「リンパ管炎」を発症している可能性があります。今回はこのリンパ管炎について、症状や原因、治療法など基本的な情報をお伝えしていきます。
リンパ管炎とは、皮膚および皮下組織のリンパ液が通っている管に細菌が感染することで炎症を起こした状態のことを言います。転んで手足に擦り傷ができたり、刃物で手足を切ったり刺したりして外傷ができると、その損傷部から細菌が入り込んでリンパ管に侵入・感染し、炎症を起こすようになります。
リンパ管炎になると、炎症を起こした部分に、鼠径部・頸部・脇の下などリンパ節に向かって伸びる幅数ミリから数センチの赤い線があらわれるのが特徴です。この赤い線の周辺は熱を帯びており、触れると痛みを伴う場合もあります。
こうした症状のほかに、悪寒、リンパ節の腫れ、発熱、不快感、食欲不振、頭痛、筋肉痛などがあらわれることもあります。感染初期の痛みはそれほど強くありませんが、慢性期になると、炎症を起こした場所は硬く太くなって圧痛を残すため注意が必要です。
また、感染がリンパ系から血流へ及ぶことで感染症が全身に広がり、リンパ節も炎症を起こしてリンパ腺炎へと症状が進行する危険性があります。
リンパ管炎のうち、急性リンパ管炎は主に腕や足の擦り傷や切り傷からリンパ管に連鎖球菌が侵入することによって感染します。そのため、猫や犬に噛まれた傷、淡水中で負った外傷などは、急性リンパ管炎を引き起こす可能性があるため注意が必要です。また、溶血性連鎖球菌やブドウ球菌などの細菌がリンパ管に侵入することによって、リンパ管やその周辺の組織に炎症が起こることで発症することもあります。
一方、慢性リンパ管炎は真菌(カビ)感染によることが多く、結核や梅毒、フィラリアなどによるものもあります。急性リンパ管炎から慢性化することは非常に稀であるため、原因菌によって臨床経過は変わります。
急性リンパ管炎になった場合、まず患部の安静と冷湿布などによる冷却を行います。患部を動かしたりマッサージすると、かえって炎症の拡大を招く危険性があるため注意が必要です。最も効果的な治療は、ペニシリン系やセフェム系の抗生物質を投与することです。原因となっている擦り傷や切り傷を適切に処置した上で抗菌薬を服用すれば症状を改善できます。
他方、慢性リンパ管炎の主な原因は真菌感染であることから治療には抗真菌薬が投与されることが一般的です。ただし、リンパ管の炎症が確認できるにも関わらず血液検査での炎症反応が弱い場合には、生理検査を行うことで全身性の病気を検査することもあります。その結果、結核や梅毒に感染していることがわかればその治療が行われます。また、フィラリアのような寄生虫感染が原因となっている場合には、フィラリアを駆除しリンパ液の流れを良くすることで症状を改善します。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。