深部静脈血栓症の合併症には、どんなものがある?対策はできるの?

2017/12/13 記事改定日: 2018/12/10
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

長時間座りっぱなしの人や、特定の薬を飲んでいる人は発症リスクが高いとされる「深部静脈血栓症」。この深部静脈血栓症には、さまざまな合併症を引き起こす恐れがあります。以降で具体的な合併症とその対策をご紹介していきます。

深部静脈血栓症とエコノミークラス症候群

深部静脈血栓症は、下半身の血液を心臓に送り込む筋膜下にある深部静脈と呼ばれる血管に血栓ができてしまう病気のことです。長時間同じ姿勢を保った場合に起こりやすい病気であり、手術をして長期間ベッドで寝たままの人や、飛行機などに乗って長時間同じ姿勢のまま動かないでいると引き起こされる可能性があります。

エコノミークラス症候群も深部静脈血栓症の一種であり、飛行機などに長時間乗る場合は発症率が高いので注意が必要です。また、腕や脚の手術やけがによって静脈を損傷した場合にも起こることがあり、ケガの治療中などに長時間同じ姿勢にならないように注意が必要です。

他に深部静脈血栓症が起こる原因には、血が固まりやすい薬を服用したことが挙げられます。具体的には、経口避妊薬や、エストロゲン療法薬を服用した時にも注意が必要です。

深部静脈血栓症の検査方法

深部静脈血栓症の検査方法は、ドプラ超音波検査やDダイマーを測定する血液検査などがあります。

ドプラ超音波検査は、超音波のドップラー効果を用いて検査する方法です。血液の流れる音の情報を得ることによって、正常な血流が流れているかを調べる方法であり、専用の機械を体に当てることによって検査をすることができます。

一方、Dダイマーを測定する血液検査は、Dダイマー(血液凝固の中で重要な役割を果たすフィブリンがプラスミンによって溶解された結果生み出される生成物)の量を測定する方法です。血栓から放出されるDダイマーには特殊な数値が現れるため、Dダイマーによって深部静脈血栓症になっているかどうかをある程度評価することができます。

他の検査法にはCT血管造影検査や放射性物質を使った肺シンチグラフィーなどもあり、いろいろな検査による総合的な診断もできます。

深部静脈血栓症の合併症とは?

深部静脈血栓症の合併症には、肺塞栓症や慢性静脈不全症、脚の血流不足(虚血)などがあります。

肺塞栓症は、深部静脈にできた血栓が血液によって肺に流されてしまうことで起こり、肺の血管を塞いでしまって死に至るケースがあります。通常の血管の血栓では肺塞栓症は起こりませんが、深部静脈血栓症になったときに生じる血栓は巨大であるため、この血栓が肺に到達したときには肺の機能が失われる可能性が高いです。

慢性静脈不全症は、下肢が慢性的にむくんでしまう症状です。

脚の血流不足(虚血)は、血栓ができることによって脚に血が行き渡らなくなり、脚が青白くなってしまう症状です。場合によっては激痛になる可能性があるため、痛みが出た場合にはすぐに専門家に診断してもらう必要があります。

合併症に対処するには何をすればいい?

深部静脈血栓症の合併症で肺塞栓症になった場合には、酸素吸入器をつける必要があります。肺の機能が低下している状態であるため、酸素を体に取り入れやすい状態を作っていくことが重要であり、場合によっては鼻カニューレ(酸素吸入に使う管状の医療器具)を利用することも重要です。また、痛みを緩和するために鎮痛薬を服用してから、抗凝固薬を投与してもらい治療に取り掛かってもらうことも大切です。

もし慢性静脈不全症になった場合には、機能しなくなってしまった静脈の弁を手術によって人工弁に取り換える必要があります。手術をするまでは膝下の弾性ストッキングを着用することによって、体がむくまないようにすることが重要です。弾性ストッキングはゆるくなったらすぐに取り替えるなどして、常に体を締め付けられるものを使いましょう。

手術後の合併症として、深部静脈血栓症になることもある!?

骨折の手術や人工関節置換術など整形外科領域の手術後には、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症などを発症するリスクが高くなることが分かっています。

これらの手術では、術後の安静期間が長くなりがちあり、患部を圧迫するため血流が悪化して血栓が形成されやすい状態となります。また、手術後は正常な身体反応として血液が固まりやすい状態になっているため、さらに血栓を形成するリスクが高い時期です。

術後は、ベッド上のリハビリやマッサージなどをおこなったり、弾性ストッキングなどを着用して血栓症を予防するようにしましょう。また、なるべく早めの離床を目指すことも大切です。

おわりに:中には死に至る合併症も。未然の予防が大切

深部静脈血栓症の中で特に発症に注意したい合併症が、死に直結することもある肺塞栓症です。発症リスクの高い方は、抗凝固薬を飲むなど未然の予防に努めましょう。

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