エキノコックスはどうやって治療していくの?

2017/12/13 記事改定日: 2019/4/9
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

エキノコックスはゆっくりと進行していく人獣共通の感染症であり、治療が遅れると死に至る可能性があります。エキノコックスにはどんな治療があり、完治させるためにはどんなことに気をつければいいのでしょうか。
動物が好きな人や自然の中で過ごすことが好きな人は感染の可能性があるので、参考にしてください。

エキノコックスの治療にはどんな方法があるの?

エキノコックスの治療法には、外科的手術で病巣を切除する方法と薬物で寄生虫を駆除する方法があります。
手術による切除が難しい場合は薬物療法(アルベンダゾール)が用いられます。この薬には、エキノコックスの成長を阻害し増殖を抑制する作用があり、30~40%の患者が治癒に至るといわれています。

しかし根治的治療法としては、病巣部分を手術で切除するしかありません。
内視鏡手術と開腹手術がありますが、いずれにおいても、手術が可能なのは病変が肝臓内に限局している場合に限られます。

肝臓内で病巣が多発して存在していたり、他臓器にエキノコックスの幼虫が転移し病巣が発生している場合は手術の対象外となります。

アルベンダゾールってどんな薬

アルベンダゾールは、エキノコックスを始めとする寄生虫を駆除するための内服薬です。
寄生虫の成長を阻害して増殖を抑える作用があり、一日600㎎を食後3回に分けて28日間服用します。

日本では主に手術治療が行えないエキノコックスの治療に用いられますが、抗てんかん薬などと服用すると効果が薄れることがありますので、内服を開始する際は、医師に常用している薬を伝えるようにしましょう。

エキノコックスを治療しないままでいるとどうなるの?

エキノコックスの成長は非常に遅く、症状が現れるまでには感染から5~10年かかります。その間に幼虫はどんどん増殖してスポンジ状の大きな病巣を形成します。一次的に病巣を形成するのは肝臓の場合が多く、その割合は98%とされます。これに伴い肝臓内の胆管や血管が塞がれ、腹痛、閉塞性黄疸の発生とともに肝機能障害が進みます。

症状が進行すると重度の肝機能不全となり、発育中の嚢胞の一部が破れ、幼虫が血流に乗って肺や脳、骨髄など、さまざまな臓器に転移します。肺に感染した場合は呼吸困難や咳症状、脳に感染した場合は意識障害や痙攣が起こります。末期には腹水や下肢の浮腫が出現します。
自覚症状のない潜伏期を過ぎ、症状が現れる進行期に入ってから手術を試みても、病巣の完全切除が既に困難になっているケースもあり、この場合は生死にかかわる問題となります。

エキノコックスの予後について

エキノコックス症は、発症してからでは手遅れとなることが多い病気です。発症後に切除せずに放置した場合、10年で90%以上の確率で死に至るとされます。
一方、早期治療を行えば予後は良好ともされています。したがって早期発見と早期治療がきわめて重要です。

数年間の潜伏期には、無症状であることが多く、肝機能も正常域ですが、血清検査でしばしば陽性となり、腹部超音波検査、CT検査などで肝臓の病巣が認められます。北海道内の市町村では血清検査(ELISA法)を行っており、少なくとも5年間に1回は受診することがすすめられています。
特に、キツネに触った心当たりがあったり、道内で犬を放し飼いにしたり飼い犬が野ネズミを捕食したことがある、という人は受診の機会を逃さないようにしましょう。

おわりに:早期発見のためにも、心当たりがある人は早めに検査を受けよう

エキノコックス症は、症状が現れてから治療しようとしても手の施しようがない危険性を有していますが、自覚症状がない潜伏期の段階で発見し、早期治療を心がければ、予後は良好とされます。心あたりがある場合は速やかに検査を受け、診断が確定したら迅速に治療を開始することが大事です。

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