全身性エリテマトーデスはどうやって治療するの?

2017/12/14

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

全身性エリテマトーデスはSLEとも言われる難病であり、自己免疫疾患です。完全に治すことはできませんが、適切な治療を施し症状をコントロールすることで日常生活を支障なく過ごすことができるといわれています。この記事では、全身性エリテマトーデスの治療法について解説しています。

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全身性エリテマトーデスはどんな病気?

全身性エリテマトーデスは、自己抗体(自分の体の成分と反応する抗体)が原因で全身の臓器が侵されてしまう自己免疫疾患です。膠原病の一種で、患者のほとんどが血液中に抗核抗体とよばれる自己抗体を有しています。
この自己抗体が、自分の細胞の核の物質と反応し、免疫複合体(抗原と抗体が反応してできる多分子結合体)を造り、皮膚、関節、血管、腎臓などに沈着することで全身に症状が生じることで症状が現れると考えられています。

したがって、現れる症状は、皮膚症状(蝶形紅斑、円板状紅斑)、関節症状、中枢神経病変、腎障害、心肺病変、血液異常など多岐にわたります。症状は寛解と憎悪を繰り返すことが特徴であり、中枢神経病変や腎障害が現れると命にかかわる危険が高くなります。

もっとも現在では早期の診断が可能となり、有効な治療法も確立されてきたため、予後は著しく改善されました。現在では全身性エリテマトーデス全体の5年生存率は95%超となっています。
世界的に使用されているヒドロキシクロロキンが2015年より日本でも承認され、免疫あるいは炎症調節薬として効果が期待されています。

ステロイドを使った治療法

SLEの原因は、自分の体内の免疫系の細胞が誤って自分自身を攻撃してしまうことだと考えられています。これに対し、副腎皮質ステロイド薬(ステロイド)は免疫抑制効果と抗炎症作用を持ち合わすことから、第一選択薬とされています。

副腎皮質ステロイドとは、腎臓上部に位置する副腎皮質から出ているホルモンを人工的につくったものです。副作用の問題などもあり、心理的な抵抗を持たれがちですが、全身性エリテマトーデスの治療においては不可欠の薬といえます。

副腎皮質ステロイドを点滴で大量に使用するステロイドパルス療法は、口から飲むより効果の出現が早く顕著とされており、重症度のかなり高いケースに使われます。一般的には3日間集中的にステロイドを点滴投与し、その後は経口服用に切り替えます。集中管理が必要となるため、この治療法を行うには入院が必要です。

その他の治療法

免疫抑制薬は、血液中のリンパ球の増殖や活性化を抑えることで、免疫反応をおこりにくくします。ステロイド薬が無効、あるいは重篤な副作用をおこしたために使用できない場合に用いられることが多く、特に重い腎障害や神経症状に対して効果的とされています。しかしステロイドのような即効性は期待できず、正常な細胞に対しても抑制作用が及ぶため副作用があらわれやすいという欠点があります。

抗凝固療法は、血栓を作りやすい抗リン脂質抗体症候群を合併している場合に用いられ、ワルファリンなど抗血小板薬を使って血栓を予防します。

体外循環療法は、自己抗体と細胞核の成分が結合することで血液中の病気を引き起こしている免疫複合体やリンパ球を体外に取り出し、フィルターを使って取り除く治療法です。ステロイドや免疫抑制剤がどうしても使用できない、あるいは効果が不十分な場合に使われます。

ステロイド治療の副作用について

ステロイドの副作用には、ムーンフェイス(満月様顔貌)、消化性障害、糖尿病、高血圧、感染症、骨粗鬆症などがあります。特に感染症(日和見感染)は、全身性エリテマトーデスによる死因の1位となっているので注意しましょう。とくに長期間服用による骨粗鬆症の弊害が指摘されており、ビスホスホネート製剤などを予防内服する場合もあります。
その他、いらいらや妄想、不眠といった精神症状が現れることもあります。

ただし急なステロイドの減量は、吐き気、頭痛、倦怠感、血圧低下などステロイド離脱症状を引きおこしやすいため、自己判断で薬を減らしたり中止することは絶対にしないでください。

おわりに:治療は薬物療法が中心。副作用を理解し、医師の指示通り正しく服用しよう

全身性エリテマトーデスの治療の基本は、副腎皮質ステロイドによる薬物治療です。ただし、長期投与はさまざまな副作用を引きおこすため、患者1人1人の症状にあわせて、必要最小限の投与を行うのが原則になっています。症状によって投薬量や方法が異なるため、医師と相談して適切な治療法を決定し、正しい服用するようにしましょう。

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