嘔吐物に血が混ざっていた・・・これって病気?救急車を呼ぶべき?

2017/12/14 記事改定日: 2019/8/5
記事改定回数:3回

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

吐血とは、消化管からの出血が原因で、口から血を吐くことを言います。吐血は少量であっても危機的状況であり、すぐに病院に行く必要があります。この記事では、嘔吐のときに血が混じる原因について詳しく解説しています。

吐血とは

吐血は、消化管(胃、十二指腸、食道)に流れた血液が口から吐き出される症状です。胃や十二指腸からの吐血は、胃液によって血液中のヘモグロビンが変色するため、血液がこげ茶や黒ずんだ色をしています。食道からの吐血の場合は、真っ赤な鮮血が多くみられます。

吐血の場合、呼吸器からの出血である喀血と異なり、咳症状を伴わず、血液に泡は含まれません。一方で、特に胃や十二指腸からの出血の場合は、食べ物のかすが含まれることが多くみられます。体温は正常で、黒い便が出ることも多いとされます。

吐血を伴う病気にはどんなものがある?

胃潰瘍

胃粘膜の防御機構が弱まることで胃粘膜に傷がついた状態です。食後、みぞおちあたりに感じる重苦しい痛みが特徴です。黒いタール状の血液が便と一緒に排泄されることもあります。主な原因として、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)感染、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の服用が挙げられます。

十二指腸潰瘍

胃酸の分泌が高くなり、それが抵抗力の弱い十二指腸の粘膜を傷つけることで発症します。早朝や空腹時に、みぞおち周辺にシクシクとした痛みがはしりますが、食事をとると痛みが治まることが多く、胃潰瘍同様タール状の血液が便と一緒に排泄されることもあります。主な原因としてピロリ菌感染、非ステロイド性消炎鎮痛薬の服用が挙げられます。

胃がん

胃がんは日本人に非常に多いがんです。初期は自覚症状が乏しく、みぞおちの痛みや膨満感、食欲不振、吐き気、貧血症状などの自覚症状が現れるころには疾患の進行が疑われます。ピロリ菌感染、喫煙、ストレス、食生活の乱れなどが原因と考えられています。

急性胃粘膜病変

急性胃粘膜病変とは、胃や十二指腸に見られる急性潰瘍やびらんのことです。粘膜のあちこちがただれ出血することで吐血が起こります。発症の原因を除去すれば回復に向かうのは早く、予後も良好とされます。原因としては、アルコールの過剰摂取や過度の精神的ストレス、ステロイド・非ステロイド性消炎鎮痛薬の多量の服用などが挙げられます。

食道静脈瘤

食道静脈瘤は、食道内にできた血液のこぶのことです。こぶが破裂すると出血し、吐血や下血が起こるおそれがあります。瘤自体に痛みはなく、吐血の他、食べ物が飲み込みにくいことや、黒っぽいタール便が続きやすいのが特徴です。慢性肝炎や肝硬変が背景にあることが多く、肝硬変の主な死亡理由のひとつとなっています。

マロリー・ワイス症候群

嘔吐を繰り返すことで食道と胃の接合付近に裂傷(潰瘍)ができて、そこから出血して生じることをマロリーワイス症候群といいます。吐血や下血が現れ、原因の30~50%は飲酒とされ、食中毒、乗り物酔い、つわりなどが原因になることもあります。

病気以外に考えられる原因は?

アルコールの過剰摂取

吐血の原因として、アルコールの過剰摂取が指摘されることがあります。アルコールには胃酸の分泌を促す作用があり、胃酸の刺激により胃がうっ血するのですが、このうっ血を繰り返すことが吐血症状を引き起こす原因となります。

ストレス

ストレスの影響も無視できません。胃や十二指腸などの働きは自律神経によって調節されていますが、精神的・肉体的ストレスによって自律神経の働きが乱れて粘膜の血流が悪化し、傷つきやすい状態になった結果、胃潰瘍や十二指腸潰瘍等の疾患を招くと考えられています。

喫煙

タバコも、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などさまざまな病気の原因となるといわれています。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、内臓の血流を悪化させます。その結果、胃の粘膜がただれ、胃潰瘍等の出血が伴う病気を引き起こす可能性があります。

それ以外に、塩分や酸味の強い食べ物、香辛料、コーヒーの飲み過ぎなども、胃や十二指腸に過度の刺激を与えてしまうことが明らかになっています。

妊婦の吐血 ― つわりが原因で血を吐くこともあるの?

つわりによる度重なる嘔吐が原因で吐血することがあります。ほとんどの場合、上記で解説したマロリーワイス症候群が原因の出血です。出血は鮮血に近い真っ赤なもののため、初めてマロリーワイス症候群を発症した人はびっくりされますが、特別な治療は必要とせず、安静にすることでほとんどは自然に治ります

しかし、マロリーワイス症候群を発症するような多量の嘔吐がある場合は、単なるつわりではなく妊娠悪阻に陥っている可能性があります。脱水などの危険な状態である可能性も考えられますので、すぐに病院を受診しましょう。

嘔吐に血が混ざって出てきたときは、早く病院で診てもらおう

吐血は少量であっても重篤な病気が隠れている可能性があります。早めに病院を受診し、医師の指示を仰ぐことようにしましょう。

なお、大量に血を吐いたときは、口中の嘔吐物で窒息しないようにすること、また、顔色や呼吸、脈拍、皮膚を観察して出血性ショックが起こっていないかどうかを確認してください。ちなみに、出血性ショックの初期症状として、頻脈(脈拍数の増加)と、皮膚の症状(皮膚が冷たく青白くなり、冷や汗が出る)が挙げられます。

救急車を呼んでもいい?

出血量が少なく、吐物にうっすらと赤やピンクが混ざる程度であり、めまいやふらつきなどの体調不良がない場合には自力で病院を受診してもよいですが、嘔吐物全体が赤く、体調不良を伴うときは救急車を呼びましょう。

おわりに:自己判断は危険。嘔吐に血が混じる、吐血が出たときは少量であっても必ず病院へ

吐血は、消化管で進行しているさまざまな疾患のシグナルともいえます。吐血の繰り返しを防ぐためには、速やかに原因をつきとめることが必要です。自己診断せず早期の受診を行いましょう。

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