記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/14 記事改定日: 2019/5/7
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
慢性疲労症候群とは、休息をとっても疲労が回復しない状態であり、それが6ヶ月以上続くことです。発症の原因はわかっていませんが、病院では薬物療法が治療の中心になります。この記事では、慢性疲労症候群の診断基準と治療で使われる薬について解説しています。
慢性疲労症候群は身体を動かすのが困難なほどの疲労感が6か月以上続き、日常生活に支障が出てしまう病気です。英語表記(Chronic Fatigue Syndrome)の頭文字を取ってCFSとも呼ばれています。
なぜこのような重度の疲労を感じるかについては、身体面の原因、精神面の原因ともにわかっていません。風邪や気管支炎などを罹ったことから風邪による倦怠感のような疲れが続いて徐々に発症することもあれば、特に予兆がなく突然発症することもあります。
一般的な慢性疲労と違って適切な休息を取っても疲労感が取れなかったり、不眠や摂食障害、うつのような気分障害に陥るケースもあります。血液検査をはじめ全身のさまざまな検査を行なってもほかの異常が何も見つからない場合に、慢性疲労症候群の発症が疑われます。
慢性疲労症候群では以下のような症状が続きます。
慢性疲労症候群は半年以上長引く病的な疲労感の他に、上記のような身体・精神的な症状がある場合が診断基準とされています。
慢性疲労症候群は発症原因がはっきりしていないことから、一般的な西洋医学的治療法では薬による対症療法が行われます。
免疫機能の低下に対しては免疫調整剤や抗ウイルス薬による治療が試みられ、全身の倦怠感や脱力感、筋肉痛、関節痛などにはうつ症状の有無にかかわらず抗うつ薬が使われ、疲労感や睡眠障害、思考力の改善にはビタミンB、微熱への対策にはビタミンCが処方されることもあります。
抗酸化作用があるビタミンCは活性酸素による細胞の障害を防ぐことにも役立ちます。内科的な治療が効果を上げにくい場合には、ストレスへの対処法などを見出して行くために、カウンセリングによる治療が行われることもあります。
慢性疲労症候群では比較的副作用が少ないとされる漢方医学的治療法が選択されることもあります。
主に使われているのは捕中益気湯(ホチュウエッキトウ)という漢方薬です。捕中益気湯は幅広い効能があるとされ、慢性疲労症候群による免疫低下や胃腸の不調、微熱や全身の倦怠感などへの効果が期待できるとされています。
このほかストレスの緩和に役立つといわれる柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)や逍遙散(カミショウヨウサン)、疲労感を取り除く帰脾湯(キヒトウ)や六君子湯(リックンシトウ)、血行障害を改善する桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)が処方されることもあります。
効果がゆっくりな漢方薬の治療以外でも慢性疲労症候群の治療には数か月から数年かかるといわれています。あせらずに治療を続けて免疫力や代謝機能も上げて、徐々に症状の改善を図っていくことが大切です。
通常の疲労は、休息をとればある程度回復します。しかし、慢性疲労症候群は休んでもはっきりとした回復がみられないため、日常生活や社会生活に大きな支障をきたしてしまうことも少なくありません。西洋医学の薬のほかにも、漢方薬治療で対応してくれる病院がありますが、どの治療方法でも完治までには長期間を要することが大半といわれています。気があせってしまうこともあるでしょうが、回復するまではじっくりと治療を続けることが大切です。