全身性エリテマトーデスの経過や生存率と日常生活での注意点とは?

2017/12/13 記事改定日: 2019/6/25
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

全身性エリトマトーデスは、免疫が自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患です。完治することは難しいですが、初期のうちに適切な治療をすることで予後が良好であるといわれています。この記事では、全身性エリトマトーデスの生存率や日常生活の注意店についてまとめています。

全身性エリテマトーデスとはどういう病気?

全身性エリトマトーデスとは、自分の身体の成分と反応してしまう抗体ができ、全身の様々な臓器にダメージを与えてしまう病気です。

なぜ、自分の身体の成分と反応する抗体ができてしまうのかは、まだよくわかっていません。複数の遺伝的要因や感染症、紫外線、ある種の薬剤など複数の要因がきっかけで免疫のバランスが崩れ、全身性エリテマトーデスが発症すると推測されています。
また、女性に圧倒的に多いことから、女性ホルモンが関与しているという推測もあります。

この病気にかかると、発熱、全身倦怠感などの症状とともに、関節、皮膚、腎臓、肺、中枢神経などにさまざまな症状が起こります。鼻からほほにかけて、蝶が羽を広げた形に似ている蝶型紅斑ができるのが特徴的です。

経過

この病気の経過は、病型や重症度によって異なります。
関節炎や皮膚症状だけの場合は薬剤によるコントロールで、健康な方とほとんど変わらない生活を送ることも可能です。

しかし、腎臓障害、中枢神経病変、心臓病変、肺病変、血管炎などの臓器障害を発症している場合は、多種類の薬剤を長期に渡って使用しなければならないこともあります。

一般的には、初期の炎症コントロールが良好であれば、長期に渡る経過の見通しも良好であるとされています。

全身性エリトマトーデスの生存率が上がった理由は?

早期の診断が可能となり、有効な治療法が確立されてきたため、全身性エリトマトーデスの生存率はこの30年で著しく改善され、とくにステロイド療法が行われるようになったことで生存率は大きく変化しました。
ステロイド治療が行われていなかった1950年代では、発症して5年以上生存する人は50%ほどでしたが、現在では5年生存率は95%以上となっています。

ステロイド療法

ステロイドは副腎から分泌されるホルモンの一種であり、炎症を鎮めたり、過剰に働いた免疫の働きを抑制する作用を持ちます。

全身性エリテマトーデスは自己免疫性疾患であるため、治療にはステロイドを使用するのが一般的です。症状が軽い場合は一日当たり15~30㎎程度の中等量のステロイド薬の内服治療を行いますが、腎臓障害や中枢神経障害などが見られるような重症の場合には一日当たり40mg以上の大量のステロイド薬投与が必要になることもあります。

また、ステロイドの内服投与を行っても症状が抑えられない場合には、一日当たり100㎎以上のステロイド大量投与を繰り返す「ステロイドパルス療法」が行われたり、免疫抑制剤が使用されます。
いずれもステロイドには様々な副作用が生じるため、治療は副作用の発現に注意しながら慎重に行っていく必要があります。

日常生活ではどんなことに気をつければいい?

全身性エリトマトーデスは慢性化し、症状が悪くなったり良くなったりを繰り返します。症状が悪くなるきっかけとして多いものが、日光、寒冷、風邪などの感染症、妊娠、外傷、薬剤アレルギーなどがあります。

また、治療薬を医師の指導通りに服用しないことも、病気を悪化させる要因です。薬をきちんと指示通りに内服し、風邪などの感染症をひかないよう注意して健康的な生活を送ることに注意しましょう。そして日焼けや急に寒い場所に行くことは病気を悪化させるため、海水浴やスキーは避けることをおすすめします。
急な災害時などはステロイドを持って避難できるよう、普段から少し予備を持つようにしておきましょう。

そして、手術や妊娠には十分な医学的管理が必要です。主治医に相談のうえ、病状に合わせた適切な管理を行いましょう。また、ステロイドの服用を中止すると、腎不全を起こしてショック状態になる危険があります。

おわりに:正しい薬の服用と規則正しい生活で症状をコントロールしよう

全身性エリトマトーデスは、いまだわかっていない部分が多い病気です。しかし、ステロイドや免疫抑制剤を使うことで、病気のコントロールは以前よりも良好になってきています。医師の指示通りに治療薬を服用し、きちんとコントロールすることで、発症前と変わらない生活を送ることも目指せます。まずは担当医に治療方針などを相談し、感染症に気を付けて規則正しい生活を送りましょう。

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