記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2017/12/11
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
冷たいものを食べたたときに、歯がキーンと痛むことを知覚過敏といいます。特定の薬や成分を使うことで、知覚過敏を改善できる可能性があることをご存知でしょうか。この記事では、知覚過敏に効果が期待できる薬剤や歯磨き粉について解説しています。
冷たいものを飲んだら歯にしみる、歯磨きのとき、歯ブラシが当たると痛みを感じるなど、これらの症状が出たときに考えられるのが知覚過敏です。虫歯ではなく、歯の象牙質が露出してしまうことで起こります。歯の表面にはエナメル質という固い層があり、その下に象牙質というやわらかい層があります。健康な歯は、エナメル質で覆われているため、冷たいものを飲んだりしても刺激が伝わることはありません。しかし、エナメル質が摩耗したり歯茎が下がってくると象牙質が露出してしまいます。すると、象牙質を通じて神経が刺激され、しみたり痛みを感じるのです。これが知覚過敏の原因です。
知覚過敏の治療で主に行われるものが、薬剤を塗布して象牙質の空隙を封鎖する治療です。
象牙質には、象牙細管という小さな管が神経まで通っており、その管を通して刺激が神経に伝わることでしみたり、痛みを感じます。この管を歯と同じような成分の結晶を含む薬を塗ることで埋め、刺激が伝わりにくくするのです。知覚過敏用の歯磨きにも似た働きをするものがありますが、歯科医院で塗布する方法の方が効果が高く即効性があります。
また、象牙質が露出した部分を樹脂の被膜で覆う治療もあります。象牙質表面がすり減っていたり、酸で溶けてへこみがある場合は、へこみを回復させるためにも使えます。
これらの治療を行っても痛みが治まらないときや、痛みが長く続くような場合は神経を抜く治療を行うこともあります。
知覚過敏の治療に使われるのが、フッ化物(フッ素)が配合された塗り薬と消炎鎮痛剤です。フッ素には、歯から溶け出したカルシウムやリンを再沈着させる再石灰化促進、歯の質を強くして酸に溶けにくくする歯質強化、歯垢の中の虫歯原因菌の働きを弱める効果の3つの効果があります。
このフッ素を含んだ塗り薬を象牙質が露出した部分に塗ることで、外部からの刺激を遮断して、歯がしみる症状を抑えます。薬剤をなんどか繰り返して塗ることで、歯の再石灰化を促し、象牙質の露出を押さえて知覚過敏の改善が期待できます。
消炎鎮痛剤は、知覚過敏の痛みがひどいときに服用する飲み薬です。消炎鎮痛剤は一時的に痛みを抑えるためのもので、知覚過敏を根本的に治療することにはつながりません。
知覚過敏の改善に効果があるとされる歯磨き粉に配合されている成分には、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、マグネシウムが挙げられます。乳酸アルミニウムは、象牙細管の開口部を狭くしたり、封鎖して神経に刺激が伝わらないようにする効果があります。硝酸カリウムやマグネシウムは神経を鈍くして、知覚過敏のしみや痛みといった症状を和らげます。
知覚過敏は冷たいものを飲んだり食べたりするだけで痛みを感じる、とても不快な症状です。症状が軽い場合は、知覚過敏のケア用歯磨き粉を使用し、きちんと口腔ケアをするだけで改善することもあります。しかし、虫歯や歯周病を併発していることもあるため、まずは歯科医院できちんと診断することが大切です。正しいケアで知覚過敏を改善してくださいね。