記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2017/12/15
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
入れ歯とは、抜けた歯を補う補綴(ほてつ)治療のひとつであり、一般的に使われている義歯です。若い世代の中には使うことに抵抗感がある人もいるかもしれませんが、目立ちにくく使用感に優れている種類の入れ歯もあるのです。この記事では、入れ歯の目的と種類について解説しています。
入れ歯には大きく分けて、総入れ歯と部分入れ歯の2種類があります。
総入れ歯は、歯を全て無くしてしまった人が使う種類の入れ歯であり、歯茎などの口内の粘膜に吸着させて装着します。上顎の粘膜には厚みがあるため、安定した装着感が得やすいといわれていますが、下顎の部分は舌などがあることで安定感を保ちにくく、使いやすい下顎用の総入れ歯を作るのは難しいとされています。
部分入れ歯は、一部の歯を失った人が使用する入れ歯になります。1~2本の歯を無くした場合はブリッジなどで補うことも多いですが、それ以上の歯を無くしている場合にはブリッジが適応できないこともあるため、部分入れ歯での治療が検討されることがあります。部分入れ歯は、残っている歯に留め具(クラプス)を引っ掛けてを固定します。もし抜けた側に固定できる歯が残っていない場合は、反対側の歯にバーをわたすといった方法で固定することもあります。
入れ歯は、床(しょう)と呼ばれる土台の部分の素材に何が使われるかで分類できます。
金属床義歯は、チタンやゴールドなどの金属で作られた床を使っている入れ歯です。金属床義歯のメリットは、土台部分を薄く出来るため、装着したときの違和感が少なく、食べ物の味や温度を感じやすいため食事の時間を楽しめるということが挙げられます。また、レジン(医療用プラスチック。保険治療で使われる)よりも丈夫で、割れにくいといったメリットもあります。
床の一部がシリコンになっている入れ歯は、シリコンがモノを噛んだときにクッションのような働きをするので、入れ歯特有の噛んだときの痛みを抑えられるのが特徴です。
ノンクラスプデンチャーは部分入れ歯の一種です。床が樹脂製で、金属製の止め具(クラプス)が付いていないため目立ちにくく、他人から見て義歯を使っていることを気づかれにくいというメリットがあります。また、素材にやわらかいタイプから硬いタイプまで素材の種類が豊富なため、自分の状態や好みに合うものが作りやすいこともメリットといえるでしょう。
歯が抜けたときにそのままにしてはいけない理由は、歯が抜けると歯肉が痩せてしまったり、隣にある歯が抜けた後のスペースに倒れてきたり、抜けた歯と噛み合っていたところの歯が伸びてきてしまい、歯並びや噛みあわせに悪影響が起こる可能性があるからです。
歯並びや噛み合せの不具合は、歯磨きがしにくくなることで汚れが残りやすくなったり、歯や歯茎への負担が大きくなる原因になります。これらの影響は虫歯や歯周病になるリスクを高める原因になるのです。
その他にも、噛み合わせの不具合は顎関節症を引き起こす恐れがあるといわれています。
入れ歯はインプラントと違い、外科手術を受けなくても失った歯を補うことが可能であり、比較的安価で治療を受けることができます。また、入れ歯の種類にもよりますが、インプラントやブリッジで治療ができないといわれた人も、入れ歯であれば治療可能になる可能性があります。
その他にも、治療期間が短くて済むことや、取り外しができるのでメンテナンスがしやすいということもメリットといえるでしょう。
入れ歯をすることに抵抗がある人もいるかもしれませんが、入れ歯は治療期間が短く比較的安価でメンテナンスが容易なため、手軽に使える義歯であることは大きなメリットといえるでしょう。また、入れ歯にはたくさんの種類があり、その中には使用感や見た目に優れたタイプの入れ歯もあります。インプラントやブリッジでの補綴治療が難しい場合は、歯科医と相談しながら、自分にあった入れ歯を選んでみてはいかがでしょうか。