記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
リンパ節炎とはウイルス感染や細菌感染などが原因でリンパ節が炎症を起こす病気です。リンパ節が腫れたり痛みが出たりしますが、原因によって治療方法は変わってくるのでしょうか。この記事では、リンパ節炎の症状と治療の注意点について解説しています。
人間の身体の中にはリンパ管が網目のように張り巡らされ、中にはリンパ液が入っています。リンパ液は身体の老廃物を排出するうえで重要な役割を担い、ウイルスや細菌などと戦い体を守る役割も持っています。
このリンパ管の節目にあたるのがリンパ節です。
体内に侵入してきたウイルスや細菌はリンパ液を介してリンパ管を通り、リンパ節に流れていきますが、このときリンパ節に感染して炎症が起こるとリンパ節炎を発症します。
リンパ節炎になるとリンパ節に腫れや痛みを伴ったり、発熱・頭痛が現れることもあります。
リンパ節炎にはいくつかの種類があります。
リンパ節は全身に分布しているため、どの部位にもリンパ節炎を発症する危険があります。特に好発しやすいのは以下の部位です。しこりや痛みなどがある場合には注意しましょう。
首の後ろや付け根、顎の下などはリンパ節が多く存在しており、鼻や喉、副鼻腔など顔面や首に近い部位の炎症が広がってリンパ節炎を引き起こすことがあります。
腫れたリンパ節がしこりとして触れ、痛みや圧痛、発赤などを伴います。また、重症な場合には物を飲み込むときなどにも強い痛みを引き起こすことがあります。
足の付け根の鼡径リンパ節も炎症が生じやすいリンパ節の一つです。骨盤内の感染症などが広がって発症することが多く、歩行するたびに痛みを伴って腫れたリンパ節に刺激が加わって強い痛みを生じます。また、下着や衣類で圧迫されることで回復するのに時間がかかり、重症化しやすいのも特徴です。
脇の下もリンパ節が集中して分布する部位であり、ワキの小傷などから病原体が侵入してリンパ節炎を引き起こすことがあります。悪化すると腕を動かすたびに強い痛みが生じ、日常生活にも支障を来たすことがあります。また、リンパ節から排膿がある場合には不快な悪臭を放ちやすいのも特徴の一つです。
リンパ節炎の原因がもし感染症だった場合、原因となった感染症への治療が行われます。
細菌感染の場合は、対応する抗生物質での治療と痛みや発熱などの症状を抑えるために消炎鎮痛剤が用いられます。
EBウイルスによる伝染性単核球症などのウイルス感染の場合は、特別な治療法がないため消炎鎮痛剤などで症状を抑えつつ安静にて自然治癒を待ちます。結核性リンパ節炎に対しては抗結核薬での治療が必要です。
このようにリンパ節炎はその原因によって使用する薬が異なります。また、炎症が腫瘍になった場合は外科的な治療が行われることもあります。
思い当たる症状があるときは自己判断で市販薬を飲むのではなく、早めに病院を受診しましょう。
リンパ節炎は、リンパの腫れや痛みなど、日常的にみられる症状が現れる病気です。そのため、軽視してしまい治療が遅れてしまうケースも少なくありません。リンパ節炎は原因によって治療法が異なるため、自己判断は危険です。必ず病院を受診し、医師の指示通り治療を進めていきましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。