記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
性染色体異常によって、低身長のまま背が伸びなくなってしまう「ターナー症候群」。もしターナー症候群と診断された場合、もう身長を伸ばすのは難しいのでしょうか?なにか身長を伸ばす方法はないのでしょうか?
性染色体異常による、女性だけに見られる疾患が「ターナー症候群」と呼ばれるものです。他の人に比べて背が低いことが特徴で、顎が小さく、首周りの皮膚のたるみが見られる、腕が肘のところで外側に向いている(外反肘)という外見的特徴が見られます。特徴の見られ方については、個人差があります。
さらに、中学生になっても性発達が見られないということや、合併症として中耳炎や骨粗鬆症、糖尿病などの治療が必要となる症状が見られることがあるということも特徴の一つです。定期的に検査をすることで早期治療が可能です。
日本人女性の標準身長は約158cmですが、ターナー症候群の女性の成人身長は約141cmと、15cmほど平均で低くなっています。これはあくまで平均的な数値です。
ただし、背が低いというだけでターナー症候群であると安易に判断出来るものではありません。低身長の原因のほとんどは体質的なもので、ターナー症候群が原因ではないケースもたくさんみられます。そのため、ターナー症候群を疑う場合には、専門医のもとで診察をうけることが必要です。ターナー症候群の場合は、性染色体異常により成長・性ホルモンが十分に分泌されないことが低身長となる原因と考えられています。
ターナー症候群による低身長を改善する方法として、成長ホルモンを投与するという方法があります。治療は早期に行うことで、高い効果を得ることが出来ます。3歳から治療を開始した場合と10歳から治療を開始した場合では、3歳から治療を開始したほうが低身長を改善し、標準身長に近づく可能性が高まります。
治療を開始する時期については、医師と話し合った上で決めるようにしましょう。治療には、1日おきもしくは毎日、寝る前に成長ホルモンを皮下注射で投与する必要があります。医療機関で行われるのではなく、これは家庭で行うものです。成長ホルモンの投与については、親権者が子供に行える医療行為として認められています。
ターナー症候群は、発見が遅くなればなるほどその分治療開始も遅れ、標準的な身長に近づくのは難しくなります。また、ターナー症候群以外の別の病気によって低身長になっている可能性もあるので、原因疾患を見つける意味でも、早期治療は非常に重要になります。
ターナー症候群の場合、なるべく低年齢の段階から治療を開始することが、身長を伸ばすためには欠かせません。何にしても早期発見が非常に重要なので、疑わしい症状がみられたら、早めに専門の医療機関で検査を受けることが大切です。