妊娠糖尿病の母体や赤ちゃんへの影響とは?食事や治療の注意点は?

2017/12/19 記事改定日: 2018/9/11
記事改定回数:2回

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

妊娠糖尿病は妊娠前は糖尿病でなかったにも関わらず、妊娠中に高血糖になる症状です。
この記事では、「妊娠糖尿病が母体や赤ちゃんにどのような影響を及ぼすのか」と「妊娠糖尿病になった場合の食事療法」をメインに、妊娠糖尿病についてお伝えします。

妊娠糖尿病は、母体と赤ちゃんにどう影響する?

妊娠糖尿病を治療をしなかったり正しく管理しなかった場合、妊娠後期の母体だけでなく赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性が高くなります。

赤ちゃん

妊娠糖尿病中の母体から生まれた赤ちゃんは低血糖に陥る可能性があります。
また、胎盤機能が低下して発育に遅れが生じ、低体重・未熟児・あるいは先天性奇形などの障がいがあらわれるリスクが高くなります。

母体

妊娠糖尿病になると膵臓がインスリンを余分に産生しても、なかなか血糖値が低下しなくなります(これをインスリン抵抗性と言います)。母親の高血糖は胎盤を通して赤ちゃんに伝わりますが、インスリンは胎盤を通過できないために赤ちゃんに届かず、必要以上のエネルギーを与えることになってしまいます。

そして、あまったエネルギーは脂肪として保存されます。脂肪がたくさん保存されていくことで、結果として巨大児や肥満児につながる可能性があり、帝王切開の可能性が高まったり、出産時に赤ちゃんの肩がひっかかり出産が難航するケース(肩甲難産)となるケースがあるようです。

また、妊娠糖尿病になると母体は妊娠高血圧症候群になりやすくなり、羊水の異常を起こしたり網膜症や腎症にかかる危険が出てきます。このように、高血糖は母体にも影響を及ぼすので、妊娠中に血糖値を適切にコントロールすることが大切です。

妊娠糖尿病になったときの食事の工夫

妊娠中は様々な栄養が必要になりますが、妊娠糖尿病の場合の食事では適切なエネルギー摂取と栄養バランスの良い食事をとることが重要になります。

食べ方

たとえば、一度の食事で食後血糖値が高くなってしまう場合は、一日三食を「朝食、10時(おやつ)、昼食、15時(間食)、夕食、夜食」に分割するなどして、総カロリー数を増やさないように少量ずつ食べる工夫をしましょう。

おやつ

間食(おやつ)には糖質が高いものや甘いものは避け、チーズやナッツ、ヨーグルト、フルーツなどを食べるようにしてください(※何を食べてよいか・避けるべきなのかは個人差があるので、医師や栄養士に確認して決めましょう)。

記録

妊娠後期になるに従って必要なカロリー量が増えますので、食事や血糖の記録を忘れずにとりながら医師や管理栄養士と相談しながら食事をコントロールしましょう。

妊娠糖尿病の治療方法は、一般的な糖尿病とどう違うの?

妊娠糖尿病と診断された場合、まずは食事療法で血糖コントロールを図ります。しかし、食事療法だけで良好なコントロールが得られない場合には、薬物療法を行う必要があります。
一般的な糖尿病の薬物療法は血糖値を下げる作用のある内服薬から開始し、内服薬で効果が見られない場合にはインスリン注射が行われます。一方、妊娠中は内服薬が胎児に影響を与えることがわかっているため、最初からインスリン注射が行われます。

悪化すると入院が必要になることも

妊娠糖尿病の症状が悪化した場合、入院治療が必要になる可能性があります。
食事療法を行っていても血糖値があまり下がらない場合や基準値を超えた状態が続く場合には
医師から入院を提案されることがあるかもしれません。

妊娠糖尿病の入院は「管理入院」または「教育入院」と呼ばれ、1週間~2週間ほど入院をして妊娠糖尿病について学び、血糖値が落ち着くまで様子をみることが多いです。
入院中は定期的に血糖値を計り、血糖値が高いときはインスリンが投与されます(※インスリンの量によって低血糖を引き起こすことがあるので、様子をみながら投与して適量を見つけます)。

妊娠中に糖尿病になってしまう原因は?

妊娠糖尿病になる原因は大きくわけて2つあります。
ひとつは、妊娠中は妊娠をしていないときに比べて血糖値を下げるインスリンが働きにくくなることです。これは妊娠中に胎盤から出されるホルモンの働きでインスリンの働きが抑えられることなどが原因と考えられています。

妊娠していないときにはエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンは卵巣で作られています。しかし、妊娠をするとエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが胎盤で作られるようになるので、これまでの体とは異なる働きが起こり、インスリンの働きが低下してしまうのです。

もうひとつは、体が赤ちゃんの分の糖分を取り込もうとするようになるからです。
妊娠中はインスリンの働きが低下しているにもかかわらず赤ちゃんのブドウ糖が必要なので、体が大量のブドウ糖を欲する状態に変化します。
また、妊娠中は多くの栄養を必要とするので、体が不足した栄養を補おうと普段以上に活発に代謝を上げようとします。そうすると代謝異常を引き起こしやすくなり、糖尿病を悪化させることにつなげてしまう可能性が高くなるのです。

おわりに:妊娠糖尿病は一時的であることが多いが、特に出産までは注意して管理することが大切

妊娠糖尿病は胎盤から出るホルモンの作用でインスリンの作用が出にくくなっていることで起こります。一時的な高血糖であり出産後に改善することが多いので、医師と相談しながら自分にあった方法で治療をしていきましょう。
ただし、妊娠糖尿病になった方は将来的に糖尿病になりやすいといわれているため、出産後も健康的な食生活を送るように気をつける必要があります。

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